記事ランキング マンガ 連載・特集

いまの中高年は恋愛至上主義!?素敵な年の取り方をしている女性についても【対談】脳科学者・中野信子さん×開発者・川田十夢さん

公開日

更新日

力武亜矢

健康のこと、年齢のこと、世代間ギャップのこと、介護のこと…… 私たちが暮らしの中でぼんやりと思いをめぐらせるあれこれを、書籍『眠れない夜に、言語化の話をしよう』の著者、脳科学者の中野信子さんと開発者の川田十夢さんに言語化していただきました。前編では、恋愛、大谷翔平、そして未熟な男性に物申す!?

中野信子 Profile

なかの・のぶこ●脳科学者、医学博士、認知科学者
東日本国際大学特任教授、森美術館理事。2008年東京大学大学院医学系研究科脳神経医学専攻博士課程修了。東京都生まれ。フランス国立研究所ニューロスピン (高礎場MRI研究センター) に勤務後、帰国。脳や心理学をテーマに、人間社会に生じる事象を科学の視点をとおして明快に解説し、多くの支持を得ている。著書に『サイコパス」(文春新書)「空気を読む脳』(講談社+a新書)、『新版 科学がつきとめた「運のいい人」(サンマーク出版)、「新版 人は、なぜ他人を許せないのか?』(アスコム)などがある。

川田十夢 Profile

かわだ・とむ●開発者
2001年メーカ一系列会社に就職。同社Web周辺の全デザインとサーバ設計、全世界で機能する部品発注システム、ミシンとネットをつなぐ特許技術発案、AdobeRe-cordsダブル受賞。2010年に独立。2013年情熱大陸出演。2014~2016年J-WAVE『THE HANGOUT』火曜ナビゲーターを担当。現在は毎週金曜日20時からJ-WAVE『TINNOVATION WORLD』に出演中。WIREDなどで連載を持つ。作・演出・開発をつとめた舞台『パターン』をフジテレビで番組化、NHK『課外授業ようこそ先輩』に出演するなど、芸術から芸能まで、ジャンルを越えた拡張を続ける。

大谷翔平の熱烈ファンが多い世代

——今日はよろしくお願いします。ゆうゆうtimeの読者には70〜80代の女性の方もいらっしゃるのですが、大谷翔平選手の熱烈なファンがとても多い印象があります。この現象を、おふたりはどうご覧になりますか。

川田十夢さん(以下、川田) 70代80代は、僕の親の世代なんですよね。母目線、祖母目線で、誇れる子どもか孫っていう感覚じゃないですかね。一番託せる、一番誇らしいんじゃないですか。みんなが知ってるっていうのもいいですね。“中高年”ってひとくくりにされるけれど、みんな違う人生じゃないですか。共通の話題が難しいんじゃないかって、僕なんか思っていたんですけど、そんなとき、大谷翔平みたいな人がいると話の共通点が生まれていいですよね。言語化したときの最初の共通点から入れるっていうのはいいと思いますけど。

中野信子さん(以下、中野) 70代80代の熱烈ファンですか、私は正直びっくりしました。でもわかる気がします。「巨人・大鵬・卵焼き」の延長かなって思います。長嶋さんとか、貴乃花さんが連続優勝していた時期に応援していたり、三浦カズ(知良)さんとか、最近では羽生結弦さん。

川田 カズさんといえば、1993年のJリーグ年間最優秀選手(MVP)受賞のとき、大きな赤い風船から真っ赤なスーツで飛び出してきたの、印象的でしたね。

中野 うんうん。大谷さんも含め、それぞれの時代の推しの担い手なんでしょうね。

中高年の恋愛観は、若い人に比べて“重い”!?

川田「若手のシンガーソングライターを見てると、自分が男なのか女なのかがそんなに明確じゃないっていうか。〜僕らの世代の長渕剛とはだいぶ違いますよね」

中野「私たちの世代が過剰に恋愛しているのは、漫画のせいだと思うんですよね。…漫画とか小説とかで、恋愛が過剰に価値が高いものと刷り込まれた世代。」

※『眠れない夜に、言語化の話をしよう』から引用

——おふたりの著書『眠れない夜に、言語化の話をしよう』の第2章で「中高年の恋愛至上主義」という言葉が出てきてどきっとしました。

中野 中高年の恋愛観は、現代のそれと比べて重い。私たちの世代が恋愛をもてはやしてきたのは、漫画とか小説の影響じゃないかと思うんです。彼氏・彼女がいないと変な人の烙印を押されるみたいな。

——メディアや音楽も「恋愛」を盛り上げていたと、本にもありました。中野さんが影響を受けた漫画は何ですか?

中野 受験の副読本として読めと言われた、源氏物語を漫画化した『あさきゆめみし』(作:大和和紀)ですかね。恋愛とは違いますけど、私たちの若い頃は、週刊少年ジャンプが最高で653万部発行されるほど、みんなが漫画を読んでいました。

——テレビの世界でも恋愛モノが歓迎されていました。

中野 「スチュワーデス物語」とか。あんな女おるかい!って思うじゃないですか。こういう重い感情をエンタメとして上手に楽しめる世代なんだと思います。

——「冬のソナタ」とか、王道の韓国ドラマが流行ったのも恋愛至上主義ですね。

中野 韓国ドラマって、演出がすごく分かりやすく派手でいいですね。昔の大映ドラマみたいで。『愛の不時着』は見ましたが、漫画っぽさがおもしろかったです。

川田 僕も見ました。戦争とか北とか南とか、そういうものをちゃんと主軸に扱える強さがあったね、韓国は。日本でもこれから出始めてるんじゃないですか。

中野 インスタグラムで、「銃で撃たれて死ぬシーンの各国比較」という動画があって、日本は「うっ」と言ってすぐ終わるけど、韓国は撃たれた瞬間にピアノのBGMが流れ始めて、そこから死ぬまでに2分くらいかかる(笑)。ぜんぜんリアルじゃないけど、感情移入できるように強調して表現するのが特徴。あえてのわざとらしさがいいっていう層が、60代70代には一定数いると思います。

川田 僕が、「死ぬまでが長い」と思った最後の日本ドラマは、長渕剛さん主演の『トンボ』です。背中を刺されたけど、なかなか死なない(笑)。僕、小学校5年生か6年生のときに、このシーンの“ごっこ”を友達とやりましたよ。僕が英二(長渕剛さんが演じた役)で、友だちにおもちゃのナイフで背中を刺してもらって、血を吐いて倒れるんですけど、また立ち上がって、落としたタバコを拾って、血だらけのまま歩くっていう。あれ、多分3~4分ありました。もしかすると、日本はああいう長尺シーンをやりすぎて、もういいやってなったのかもしれないです。

——恋愛至上主義が過ぎた時代が、今は「なつかしい」と感じるように。世界観が少しずつ変わってきているんですね。

画面トップへ移動