【ばけばけ】を深読み。錦織(吉沢亮)に「嘘は嫌いでしたよね」と確認されるくだりは、効果的な演出だ
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田幸和歌子
テーブルに座り洋食を堪能するヘブンが
こうして始まったヘブンとトキの新婚生活であるが、これまでと変わらず教師としてのヘブンをサポートする錦織(吉沢亮)と教育に関する熱い議論をたたかわせているからと、新婚早々、帰宅が遅くなり夕食をとらない日が続く。しかも、ある夜には口元に赤い紅のようなものをつけていた。
不審に思ったトキは、転居のためにヘブンが中学校に通うために用意された専属の人力車の車夫・永見(大西信満)に行方を聞いたり、ヘブンが山橋薬舗に入るところを目撃したことで店主(柄本時生)を問い詰めたりするなど、探偵のような行動に出る。いろいろとぼけてごまかす店主を押し切って山橋薬舗の奥の扉を開けたところに、テーブルに座り洋食を堪能するヘブンがそこにいた。
ヘブンの隠れた行動にはやはり、「チョットツカレタ」という理由があった。日本人どうしの結婚だって、昔から味噌汁の味ひとつでいずれかの実家の味が恋しくなるようなことはたくさんある。まして国際結婚ともなると、それはあまりにも大きなギャップが存在するだろう。結婚前から日本での暮らしに馴染めない部分もあっただろうヘブンにとって、洋食を時々たしなむ時間も必要であろう。
「嘘をつかれるのは一番嫌です」
と、トキは言う。もとよりヘブン自身が嘘が嫌いな性質である。ヘブンの行動が明るみに出る前に、錦織に嘘は嫌いでしたよねと確認されるくだりも効果的な演出だ。
「ニホンノヤリカタ、マツノケノヤリカタ、ダイスキデス」この言葉にも嘘はないはずだろうし、「ヤットデキタ、カゾク」という言葉には、幼いころに父に捨てられ各国を転々としてきたヘブンがずっと求めてきた「家族」というものへの思いが込められており、ヘブンのパーソナルに触れることができる。「家族だから」二人はもう、ヘブンが求め続けた「家族」なのである。
「家族だからやっぱり言ってごしなさい」
トキのこの言葉によって、ようやく二人は真の夫婦に、そして家族になれたのではないだろうか。
本音をぶつけ合ったことで、より深く分かり合えたトキとヘブン。
拒絶した頬へのキスも受け入れ、幸せそうに笑い合う。ヘブンの口元の「紅」も、西洋料理に使うケチャップだったこともまた、ちょっとした誤解を生むいい笑い話となった。
結婚とは、妥協や我慢をするものではない。お互いを理解し受け入れていきながら育てていくものである。笑い合う二人の姿が、そう物語っていたような気がした。
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