「なぜ、ウチの子は結婚できないのか」そんな親が挑む「代理婚活交流会」とは?シビアな現場をレポート
人物像をどう売り込むか
「割り込んだみたいで失礼しました。私、208番の母です」
「こちらこそ話が長引いて申し訳ありません。はじめまして。よろしくお願いします」
208番、33歳の女性は我が家も候補に挙げていたが、先の男性側アプローチタイムでは5人の親の順番待ちがあった。列に並ぶのを後回しにしたら時間切れになってしまったと伝えると、母親は「たくさんお声がけいただいて……」と頬を緩めた。栗色の髪に大ぶりのピアス、スタンドカラーのジャケットからワインレッドのスカーフがのぞき、見るからに華やかな印象だ。
「時間もないので、先に娘の身上書を見ていただけますか」
手早く身上書が渡された。貼付された写真は母親に似た華やかさで、おそらく写真スタジオで撮影したものだろう。メイクは完璧、セミロングの髪は内巻ロール、淡いピンクのワンピース姿でポージングも決まっている。
「おきれいな娘さんですね」
そう言った私に、いたずらっぽく笑ってみせた。
「実物よりだいぶ補正してます。でも婚活写真は盛ってナンボと娘が言うもんですから」
外見の印象から気取った人かと思ったが、意外にもフランクだ。私は親しみやすさを覚え、笑顔を返しながら息子の身上書を差し出した。
「あらぁ、息子さんのお写真もいいですねぇ。年齢よりずっと若く見えるし、知的な感じ。娘のタイプかもしれません」
フランクな上におだてるのもうまい。こういう母親に育てられたなら、娘も気さくで明るそうだ。
「それでね、お聞きしたいのはここなんですけど……」
母親はブルーの男性リストと、手にしたばかりの身上書の記載内容を交互に指さした。
「お宅の息子さんはIT関係でしょ? 特技の欄に英語ってありますけど、英語を使ってお仕事されてるんですか」
「一応、海外とのやりとりでは英語を使ってるみたいです。でも日常会話レベルだと思いますけど……」
実家でテレワークをしているとはいえ、私は息子の仕事の詳細を知らない。コロナ禍でバーチャルオフィスになり、社員同士はチャットやオンライン会議でコミュニケーションを取っているようだが、いちいち詮索したこともない。何度か転職し、海外に拠点を持つ企業でも働いてきたから今も似たようなものだろう。そんな話をそのまま伝えると、母親は軽やかに言った。
「あらぁ、もったいない」
意味がわからず首を傾げた私に向けて、勢いよくつづける。
「そういうこと、ちゃんとリストに載せたほうがいいですよ。仕事がデキる男性だっていうのが、女性には強いアピールになるんですから」
「いえ、そんな。ウチなんかほんとにふつうのサラリーマンです。息子より優秀な方は山ほどいますし、今の会社では下っ端の平社員ですから」
慌てて否定したが、母親は悠然と返してくる。
「ご謙遜はわかりますけど、こういう場ではアピールが大事ですよ。だってみなさん、お子さんのお相手を選ぶのに、まずはリストに載った内容で判断するでしょう? 〈会社員〉っていうだけじゃ、具体的にどういう人かわからない。性格も〈真面目〉、〈誠実〉なんて書く親御さんが多いですけど、ありがちだから目立たないんですよ」
言われてみればなるほどだ。限られた情報から「お相手」候補を探すとき、なにかしらの特徴的な文言のほうが目を引きやすい。当人同士が交流するならともかく、この場にいるのは代理の親。我が子の人物像をいかに差別化して売り込むか、そこが大事なのだと今さら気づいた。
