朝ドラ【風、薫る】りん(見上愛)と直美(上坂樹里)、タイプ違いでも“ベタベタしない信頼”が育つ瞬間
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田幸和歌子
「ずる賢い女って言ってくれません?」
りんのがんばりは、かたくなな千佳子の心を少しずつ開かせる。シーツのメイキングがよかったと、少しずつ受け入れる姿勢をみせたり、双六を一緒にやろうと提案し、そのエピソードから変わりゆく世界という共通の話題で空気が和らぎ、やがて涙を流しながら本音を吐露、あれだけこばんでいた身体をさするというところまでの流れが自然に描かれていく。ここはりんが元家老の家系であることが効果的にいかされており、それは直美とバーンズの狙いでもあった。そしてそれは正解だったことが分かる。
そのように、直美は見習いたちの中でも「わかってる」度が高いというか、医師ころがしのうまさなど、孤児として成長してきた中で培ったハングリー精神のような強さのもと、時には世渡り上手のような聡さをみせる。それを、
「他の見習いたちと違って、ずいぶんずるい女ね」
と看病婦に指摘されれば、
「ずる賢い女って言ってくれません?」
と返すところも直美のクレバーなキャラクターが実感できる。
とはいえそんな直美にも、大きく心が動かされる場面が並行して描かれる。ある日、街を歩いていた直美は、「お前は、夕凪か!?」と、見知らぬ老人に声をかけられる。彼の知る「夕凪」という女郎に直美が似ていたというのだ。親の名前も顔もわからず、自分がどこからきたのかというアイデンティティが喪失している直美にとって、生みの親かもしれない女性の手がかりは、気持ちを大きく揺さぶるものだ。
何か分かるかとあとをつけた先に出会ったのが、詐欺師の寛太(藤原季節)だった。寛太は直美が潜入しようとしたのは博打場で、近づかないほうがいい、自分が調べてやると言う。寛太は自分が人を騙すことにも、寛太なりの理由はあると自ら主張する。環境こそ違えど、家族という存在や愛を感じることなくそだった寛太とは、病院でもうまく立ち回ることのできるいっぽうで、どこか仮面をかぶっているところもある直美が本心を語っていく関係性になっていけそうで気になるところである。
「空が綺麗と思う人が主人でよかった」と語る千佳子の夫・元彦(谷田歩)が、りんが旧幕府時代に一ノ瀬家の出身であることが分かり、それをきっかけにりんと語り合うことで、夫には言えない千佳子の本音に触れ、千佳子に「私のために」と、手術を受けることを勧める。
「辛くとも、苦しくとも、生きてほしい」
この先もずっと一緒に美しい夕映えの空を見たいからだと。この夫の心からの愛を受け入れ、千佳子は手術を受けることを決意、りんはその手術に立ち会うことも「勉強になるでしょ」と千佳子から提案されるという受け入れられ方だ。
「実習生の手柄」という目論みが達成されるかどうかという目先の思いを超えた本質的な部分に触れた、りんたちの「看護」は、実習生たちの存在をさらなる上のものへと進ませていくことになるだろう。チームとして、直美とりんのバディとして、トレインドナースたちの進む道が楽しみになる展開だ。
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