【豊臣兄弟!】天下人を目指す秀吉(池松壮亮)を小一郎(仲野太賀)はどのような覚悟で支えていくのか?
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志賀佳織
第32回「賤ケ岳の決闘」
そして、物語はいよいよ「賤ケ岳の戦い」へ入っていく。天正10(1582)年12月、織田信雄を擁した秀吉は、柴田勝家の領地となっていた長浜を取り戻し、岐阜の織田信孝との戦いを始めた。雪によって道が閉ざされ、勝家からの援軍が来ないことを見越しての攻撃であった。信孝はあっさりと三法師を敵方に引き渡し、人質も差し出して降伏。三法師は当面、秀吉が手元で保護することになった。しかし、小一郎は信孝がこのまま引き下がるとは思えなかった。
能登の七尾城には雪が降りしきっていた。自分と夫婦になったために苦労をさせてすまないと利家がまつ(菅井友香)に謝ると、まつは自分は「あなた様といられますゆえ」雪も冬も大好きだと答える。そして、「雪はこの北国に平穏をもたらしまする。いっそこの日の本中に、ずっと雪が降ればいいのに」と笑顔で言うのだった。
そこへ、秀吉が義弟の副田甚兵衛(じんべえ/前原瑞樹)を連れて、酒を土産に無邪気に利家を訪ねてくる。そのあまりの無謀さに、戸惑いながらも迎え入れた利家だったが、その表情は厳しい。
来訪の意図を聞かれ、秀吉は利家とまつ夫婦には、夫婦の娘・豪姫(福地美晴)を養女に授けてもらった恩義があること、寧々(ねね/浜辺美波)とまつを敵同士の妻にしたくないことなどを語ったうえで、こう説得し始めた。「おぬしが我らに降れば、戦となる前にことを終わらせられるかもしれぬ」
しかし、利家は耳を貸さない。「あの親父殿はそんなたまではないわ。わしが寝返ろうが寝返るまいが、降伏などはせぬ」。秀吉も食い下がった。「今の織田では何も変わらぬ。柴田殿は今あることを守ることはできても、新しき世を作ることはできまい。だからわしがやると決めたのじゃ。もうこんな世はうんざりじゃからのう。又佐(利家の通称・又左衛門の略)、わしは天下人になる」
そのあまりに物怖じしない堂々とした宣言に、利家は驚愕、手から盃を落とし、「ふざけるな! なんでこのわしがお前に仕えねばならぬのじゃ」と怒って、秀吉を追い出してしまう。それを雪降りしきる凍てつく濡れ縁で聞いてきた甚兵衛は、「まだ誰にも言うでない」と命じられてこう返す。「ですが、皆も待っている気がします。殿の口からそのお言葉を聞けるのを」
北庄城では、勝家が家臣らを集めて宴を開き、まもなく雪解けとなれば、改めて秀吉を討つと決意を新たにする。利家と佐々成政(さっさなりまさ/白洲迅)が腕相撲を始めて、その場は大いに盛り上がる。最後、勝家も参加するとなり、利家と勝負をしたところ、利家が勝つ。褒美に何がほしいかと聞く勝家に、利家は思わずこう伝えてしまうのだった。「殿、天下人になってくだされ。天下人となって、新しき世を作ってくださりませ。わしはその手伝いがしとうござりまする!」
しかし、それを聞いた勝家は激怒、「このたわけが! このわしがそのようなことを望むとでも思うておるのか。上様が作られた織田家をお守りし、いずれ三法師様を天下人にする。それこそがこのわしの務めだ。つまらぬことを口にするな!」
天正11(1583)年3月、勝家は2万の軍勢を率いて出陣し、北近江の柳ケ瀬(やながせ)に陣を敷いた。秀吉も軍を動かし、両軍は北近江で対峙した。小一郎は守りの要である田上山(たがみやま)砦に入るが、予想通り、信孝が岐阜で再び挙兵したという知らせが入り、秀吉は岐阜へ急行した。しかし、その間に、大岩山(おおいわやま)砦を守る中川清秀(きよひで/すがおゆうじ)が柴田方に寝返り、砦が陥落、岩崎山(いわさきやま)砦も落ちた。
しかし、万事休すと思われたときに、知らせを聞いた秀吉の軍勢が驚異的な速さで引き返す。その甲斐あって、秀吉軍は柴田軍を次々に退け、田上山砦を攻撃していた佐久間軍は敗走した。
勝家のもとを利家が訪れた。命令に背いて佐久間軍の救援に利家が従わなかったことを察した勝家は、利家に斬りかかる。利家も応戦し激しく戦った末、勝家の刀が利家の腕を切りつけた。「わしは親父殿に上様のあとを継いでほしかった。親父殿とともに新しき世をつくりとうござりました!」そう思いをぶつける利家に、勝家はこう答えるのだった。「わしは織田家家老、柴田勝家じゃ。今さら変わることなどできん。その願いは別の者と果たせ」
深々と頭を下げる利家の上に雪が降り続いていた。利家は、秀吉の陣に向かった。「待っとったでよ」と出迎える秀吉。「約束しろ。天下人になるなら、この日の本にずっと雪を降らせろ」。「わかった、約束する」と答える秀吉だった。
織田家の世をもう一度生きたかった者たちと、新しい戦のない平穏無事な世の中を望む者たち。時代の移り変わりというのは、常に残酷だ。天下を取るために次々と驚く手段に出る兄を、小一郎はこれからどのような覚悟で支えていくのか。市の行く末も見守りたい。
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