50代は「お金で時間を買う」、60代は「時間を楽しむ」。黒部移住で変わった、60代ひとり暮らしの実感
年金だけでは暮らせそうにない……それなら毎月10万円の収入を生み出す仕組みをつくる! そして住み慣れた大阪を離れ、自然豊かな黒部へ移住。60代ひとり暮らしの中道あんさんは、自分らしい暮らしを楽しみながら、新しいことに挑戦中です。今回のテーマは、お金では変えない贅沢!
自分の暮らしが少しずつ整っていくような
黒部に移住してから、暮らしの中に「つくる」ことが増えました。
その一つが畑です。
大阪にいた頃から花が好きで、フラワーアレンジメントを習ったり、家に花を飾ったりしていました。でも、花を思う存分飾ろうと思えば、4,000〜5,000円はかかります。そこで、自宅の花壇に切り花用の花を育てていたこともありました。
ところが、黒部のわが家の近くには、気軽に立ち寄れる花屋さんがありません。だったら、畑の空きスペースで花を栽培しょう。7月、借りた畑の余ったスペースにコスモスの種を蒔きました。
最初はそれほど芽が出ず、「こんなものか」と思っていたのですが、お盆を過ぎた頃から急成長。茎は500円玉ほどの太さになり、どんどん繁殖エリアを広げていきます。隣の畑にまで伸びていきそうで、「ちょっと植えすぎたかも」と困るほどになりました。
けれど、おかげで花が咲いてからは、家の中のあちらこちらにコスモスを飾ることができました。こんなに、コスモスに囲まれたのは生まれてはじめてです。
畑を始めて知ったこともたくさんあります。
紫蘇に花が咲き、そのあとに実がなることも知りませんでした。
「へぇ、こんなふうになるんだ」最初はそれだけでした。
もうそろそろ紫蘇も終わりかなと思っていた頃、隣の畑の人が何やら紫蘇から摘んでいます。聞いてみると、紫蘇の実を収穫しているとのこと。佃煮などにして食べられると教えてもらいました。
さっそく私も少し収穫して、塩漬けにしてみました。
炊きたてのご飯にのせて食べると、ほんのり紫蘇の香りがします。市販のふりかけのような強い味ではありません。でも、自分で育てたものを最後までいただいていると思うと、それだけで満足でした。大根の間引き菜も捨てずに佃煮に。気づけば、ご飯のお供を買うことが減っています。
「余すところなくいただく」そんなことをしていると、食べ物だけでなく、自分の暮らしまで少しずつ整っていくような気がします。
バジルも想像以上でした。
どれくらい育つのか分からず植えたところ、畑の一角がバジルの香りに包まれるほどに成長。あまりにたくさんできたので、初めてバジルソースを作ってみました。
ところが、これが美味しくない。材料の配合を変えたり、作り方を変えたり、何度も試作しました。最近になって、ようやく「これなら美味しい」と思える味になりました。
定番のジェノベーゼパスタもいいのですが、私がすっかりハマったのは、トマトとチーズにバジルソースを合わせたトーストサンドです。
わが家にはオーブントースターがありません。パンをどう焼くのか。チーズをいい具合に溶かすにはどうすればいいのか。そんなことまで試しているうちに、何度も試作品を食べることになり、あっという間に太りました。
自家製の鶏ハムを加えてみたりもしました。泊まりに来た友人の朝食に出すと好評でしたが、結局、私がいちばん好きなのは、トマトとチーズだけのシンプルなもの。
こんなふうに何度も試して、「自分の定番」ができていく。
効率だけを考えれば、ずいぶん遠回りです。でも、その実験が楽しいのです。
