還暦、古稀、喜寿、傘寿、米寿、卒寿【賀寿の決まりごとと祝い方】は知っている?
人生の節目を祝う長寿のお祝いを賀寿といいます。50代からは、親世代を祝う機会が多くなりますね。と同時に、自分が祝われる年代にもなっていきます。還暦や古稀は現役感があるので、年寄り扱いには抵抗のある人もいます。現代礼法研究所主宰の岩下宣子さんにお話を伺いました。
年寄り扱いを嫌う人も多いのでお祝いは慎重に
文字通り、長生きを祝う行事で、昔は40代くらいから行われていましたが、寿命が伸びた現在は、満60歳(数え歳61歳)の還暦から長寿の祝いととらえることが一般的です。
ただ、最近では60歳はまだまだ現役。仕事を続けている人も少なくありません。本人が現役のうちは、年寄り扱いを嫌う人も多いものなので、ことさらに「長寿」を強調せずに、さりげなく節目の誕生日のお祝いとするほうが、本人が喜ぶ場合もあります。
現役を退いた喜寿、傘寿から本格的に
賀寿を祝われることをうれしく思うのは、現役を退いてからという人が多いようです。本格的にお祝いをするのは喜寿や傘寿以降がいいでしょう。
身内が集まって祝宴を開いたり、旅行へ招待したりするなどの祝い方が一般的です。
とはいえ、夫婦健在か、健康状態は、住まいは近いのか……と人によって状況はさまざまですから、形式にこだわらなくてもかまいません。せっかくのお祝いなので、子どもやきょうだいなどが集まって食事をともにするだけでも。
心にかけてもらっていることが、本人にとっては最もうれしいことなので、勝手に判断せず、祝う気持ちがあることを本人に伝え、意向を聞いて無理のない形で祝福しましょう。
お祝い事は数え年で祝う
最近ではお祝い事を満年齢で数えることが少なくありませんが、伝統的な行事では数え年を基準にします。昔の日本では元日ごとに歳を重ねる「数え年」年齢方式で、毎年の誕生日を祝う習慣はありませんでした。
数え年では生まれたとき1歳、その次に迎えるお正月には2歳になります。誕生日が12月31日の人は、誕生の日が1歳、翌日の1月1日に2歳になるわけです。
賀寿なども数え年で数えますから還暦は満60歳。古稀は満69歳ですね。
賀寿の祝い方、今どきの事情
賀寿の祝い方はいろいろ。夫婦健在であれば、どちらかの賀寿に夫婦旅行をプレゼントするのも一案。その場合、きょうだいで費用を出し合って、記念になるような旅行をセッティングするのもおすすめ。
ある人は母の傘寿のお祝いに、妹と3人で旅行を楽しんだそうです。
山あり谷ありの人生を乗り越え、ここまで元気で生きてきたことを祝うのが賀寿。さまざまな人生があるように、祝い方もそれぞれのようです。
ある人は、学生時代の同級生で集まり、一緒に古稀祝いの旅行に。おいしい食事に舌鼓を打ち、思い出話に花を咲かせ、ホテルが用意してくれた紫の帽子とちゃんちゃんこで記念写真を撮ったことがいい思い出だそうです。
またある人は、傘寿の会を自ら企画して、傘寿を祝ってもらうというより、これまでお世話になった人を招いて食事とともにゲームやクイズなどを楽しんでもらいました。親族も参加し、知人に親族を紹介したり、みんなに喜びの気持ちを聞いてもらい、甥から思いがけない祝辞を受けるなど、感激のひとときだったそうです。
賀寿のお祝いとお返し
賀寿の祝い
【水引】赤白または金銀の蝶結び
【表書き】御祝/御○○(賀寿名)/祝○○(賀寿名)/寿福など
【贈る時期】当日(誕生日)または事前に。
【金額】1万〜3万円
子どもたちでまとめて旅行などの費用を贈っても。
お返し
祝賀会や祝宴などを開いてもらったら、引き出物を準備する。
【水引】赤白の蝶結び
【表書き】内祝
【金額】いただいたお祝いの額の1/3〜半額を目安に。
賀寿の名称と年齢、由来、現代的な祝い方
還暦(かんれき)
数え年:61歳
基調色:赤
由来:十干(じっかん=甲、乙、丙など)十二支(子、丑、寅など)60年が一巡し、61年目には生まれた年と同じ「暦」に「還(もど)」ることから。
現代的な祝い方:以前は「赤ちゃんに戻る」という意味で赤ずきんやちゃんちゃんこを贈ったが、現在は赤い装飾品や花束などを贈るのが一般的。
緑樹(ろくじゅ)
数え年:66歳
基調色:緑
由来:「6=ろく=緑」の語呂合わせから、2002年に提唱された商業ベースの賀寿名。
現代的な祝い方:「緑」にちなんで、緑色の服や小物、観葉植物などを贈っても。
古稀(こき)
数え年:70歳
基調色:紫
由来:杜甫の詩『曲江』の一節「人生七十古来稀なり」(七十年生きることは古くから稀である)から。古希とも。
現代的な祝い方:社会的に現役の人も多いので、本人がいやがるようなら特にお祝いはしなくても。
喜寿(きじゅ)
数え年:77歳
基調色:紫
由来:「喜」の草書体(くずし字)である「㐂」が七十七と読めることから。
現代的な祝い方:古稀と喜寿には、基調色とされる紫の座布団などを贈ることも。
傘寿(さんじゅ)
数え年:80歳
基調色:金茶
由来:「傘」の略字「仐」が八十と読めることから。
現代的な祝い方:傘寿以降は、現代でも長生きといえるので、周囲が働きかけて積極的に祝いたい。
半寿(はんじゅ)
数え年:81歳
基調色:金茶
由来:「半」の字が、「八」「十」「一」に分解できることから。「盤寿」(将棋盤のマスが9×9で81あることから)ともいう。
米寿(べいじゅ)
数え年:88歳
基調色:金茶
由来:「米」の字が「八」「十」「八」に分解できることから。
卒寿(そつじゅ)
数え年:90歳
基調色:白
由来:「卒」の略字「卆」が「九」「十」に読めることから。
白寿(はくじゅ)
数え年:99歳
基調色:白
由来:「百」という字から上の「一」をとると「白」になることから。
百寿(ひゃくじゅ)
数え年:100歳
基調色:白
由来:文字通り百歳のお祝いという意味。1世紀の「紀」から「紀樹(きじゅ)」「百寿(ももじゅ)」「百賀(ももが)」「上寿(じょうじゅ)」とも。
※以降、108歳を茶寿、110歳を珍寿、111歳を皇寿、121歳を2度目の還暦という意味で大還暦といいます。
※この記事は『50代からの冠婚葬祭きちんとマナー』岩下宣子監修(主婦の友社)の内容をWeb掲載のため再編集しています。
現代礼法研究所主宰
岩下宣子
共立女子短期大学卒業。全日本作法会の内田宗輝氏、小笠原流の小笠原清信氏のもとでマナーを学ぶ。1985年、現代礼法研究所を設立。多数の企業や公共団体などでマナーの指導、研修、講演、執筆活動を行う。NPO法人「マナー教育サポート協会」理事長。『美人のことば練習帖』(三笠書房)、『40歳までに知らないと恥をかく できる大人のマナー260』(KADOKAWA)、『書き込み式おつきあいを大切にする安心メモリー帖』(池田書店)、『冠婚葬祭マナーの新常識』(主婦の友社)など、著書、監修書多数。
共立女子短期大学卒業。全日本作法会の内田宗輝氏、小笠原流の小笠原清信氏のもとでマナーを学ぶ。1985年、現代礼法研究所を設立。多数の企業や公共団体などでマナーの指導、研修、講演、執筆活動を行う。NPO法人「マナー教育サポート協会」理事長。『美人のことば練習帖』(三笠書房)、『40歳までに知らないと恥をかく できる大人のマナー260』(KADOKAWA)、『書き込み式おつきあいを大切にする安心メモリー帖』(池田書店)、『冠婚葬祭マナーの新常識』(主婦の友社)など、著書、監修書多数。
50代からの冠婚葬祭きちんとマナー Kindle版
岩下宣子監修
主婦の友社刊
暮らしもおつき合いの幅も縮小していく大人世代。そんな中でも、最低限おさえておきたい冠婚葬祭のしきたりや、お中元、お歳暮、お見舞いなど、日々のおつき合いにおけるお金の相場やマナーをわかりやすく解説。年金生活者やそのプレ世代が、負担を減らしながらも気持ちをしっかりと伝えるために役立つ常識が満載です。