お中元・お歳暮【暮らしの中の贈答のしきたり】贈り物を手渡すマナーは大丈夫?
お中元やお歳暮、引っ越し祝いなどは、どうしていますか。日常の贈答には、お礼やお祝い、お返しなどがありますが、本当に必要な贈り物は、心を通わせてていねいに贈りましょう。「のし紙」なんて大げさ、と感じる人もいるかもしれませんが、贈る目的をはっきり伝えるために意味のあるものです。現代礼法研究所主宰の岩下宣子さんに教わりましょう。
大切なのは気持ちで、お金や品物は添えもの
日頃からお世話になっていると感じている方には、お中元やお歳暮を贈り、祝う気持ちがあるときには、新築祝いや新居祝いなども可能な範囲で贈ります。
その気持ちを伝えるために、時期やしきたりを知っておくことは、大人のおつき合いを円滑にするポイント。
大げさなように感じる「のし紙」なども、贈る目的をはっきり伝えるためのもの。のしや水引、表書きの意味と決まりごとを確認し、相手に思いを正確に伝えることが大切です。
基本は先方に持参し、配送するなら送り状を
贈答品は、本来、先方に持参し、あいさつの言葉とともに届けるものです。しかし、お互いに忙しい昨今では、贈る側も贈られる側も負担が大きく、デパートなどから配送してもらうことが多くなっています。
とはいえ品物だけをポンと送りつけるのはマナー違反。必ず送り状を添えて送ります。送り状には、どこから、いつ、何を送ったのかを明記して、品物より先に先方へ届くようにします。しかし、タイミングを見計らうのがむずかしいこともあり、最近では、カードなどを持参し、品物と一緒に送ってもらう方法もとられています。
贈り物はふろしきに包んで持参する
現在は、品物を買った店の紙袋に入れて持参することが多くなりましたが、ふろしきに包んで持参すると、とても上品です。
紙袋やふろしきは汚れを防ぐためのもの、そのまま差し上げては、汚れも一緒に渡してしまうことになるので、必ずふろしきや紙袋からとり出し、品物だけを手渡します。ふろしきはざっとたたんで、紙袋も折りたたんで持ち帰ります。
また、玄関で靴を脱ぐときなどに、紙袋を地面に置くのも失礼です。上がったところに置くようにし、差し上げるのも地面に直接置かないことは大切なマナーです。
手渡すときは正面を向け相手に差し出す
相手宅を訪問して贈り物を差し上げるときは、手順やのし紙の向きに注意しましょう。
品物をふろしきや袋に入れたまま、下座(自分より出口側)に置き、「その節はありがとうございました」「おめでとうございます」など目的を伝えるあいさつをします。
あいさつのあと、ふろしきや袋から品物をとり出し、品物だけを自分の前に置きます。
品物を時計回りに相手に向け、両手で差し出します。
いただく側は会釈をし、両手で品物を受けとり、胸の高さまでおしいただいてから上座(床の間側または出口と逆側)に置いてお礼を述べます。
立ったままのときは、贈り物は手に持ったままで同様に渡します。
主な贈答の意味と送り方
お中元・お歳暮
お中元は夏の、お歳暮は暮れのごあいさつ。目下の人から目上の人に贈るのが基本。お中元は7月初旬から7月15日くらい(月遅れのお盆までに贈ればいいという地域も)。お歳暮は12月上旬から下旬です。
・赤白蝶結びののし紙または短冊
・海産物のときはのしはなし
陣中見舞い・楽屋見舞い
陣中見舞いは仕事、スポーツなどでがんばっている人への激励の贈り物。発表会などでは「楽屋御見舞」とします。陣中見舞いには食べ物や飲み物など、楽屋見舞いにはやはりちょっとつまめる食べ物や花を。初日または期間中に。
・赤白蝶結びののし紙(のし袋)
お礼
文字どおり、お世話になった人へのお礼。表書きは「粗品」「御礼」。目下の人へは「寸志」も使います。
・赤白蝶結びののし紙(のし袋)
お年賀・お年玉
年始のあいさつの手土産、親戚などの子どもへ渡す金品
・赤白蝶結びののし紙(のし袋)
・お年玉はポチ袋、お年玉用の袋
お祝い
誕生から長寿のお祝い、金婚式などの結婚記念、受賞、叙勲、新築、開店、開業、昇進、栄転、定年など、おめでたいこと全般。当日か、事前にお渡しするのがしきたりです。遅れてしまったときには、「遅くなりましたが」と一言添えて。
・繰り返したいお祝いは赤白蝶結びののし紙(のし袋)
・一度きりのお祝いは赤白結びきりののし紙(のし袋)
お返し
お見舞いやお祝いをいただいたときに返礼として贈るものです。現状のおつき合いを続けていきたい場合、いただいた金額の3分の1から半額を目安に返し、儀礼的なおつき合いをやめたいときには礼状だけに。
・繰り返したいお祝いのお礼は赤白蝶結びののし紙(のし袋)
・快気祝いなど、一度きりにしたいことでは赤白結びきりののし紙(のし袋)
※この記事は『50代からの冠婚葬祭きちんとマナー』岩下宣子監修(主婦の友社)の内容をWeb掲載のため再編集しています。
現代礼法研究所主宰
岩下宣子
共立女子短期大学卒業。全日本作法会の内田宗輝氏、小笠原流の小笠原清信氏のもとでマナーを学ぶ。1985年、現代礼法研究所を設立。多数の企業や公共団体などでマナーの指導、研修、講演、執筆活動を行う。NPO法人「マナー教育サポート協会」理事長。『美人のことば練習帖』(三笠書房)、『40歳までに知らないと恥をかく できる大人のマナー260』(KADOKAWA)、『書き込み式おつきあいを大切にする安心メモリー帖』(池田書店)、『冠婚葬祭マナーの新常識』(主婦の友社)など、著書、監修書多数。
共立女子短期大学卒業。全日本作法会の内田宗輝氏、小笠原流の小笠原清信氏のもとでマナーを学ぶ。1985年、現代礼法研究所を設立。多数の企業や公共団体などでマナーの指導、研修、講演、執筆活動を行う。NPO法人「マナー教育サポート協会」理事長。『美人のことば練習帖』(三笠書房)、『40歳までに知らないと恥をかく できる大人のマナー260』(KADOKAWA)、『書き込み式おつきあいを大切にする安心メモリー帖』(池田書店)、『冠婚葬祭マナーの新常識』(主婦の友社)など、著書、監修書多数。
50代からの冠婚葬祭きちんとマナー Kindle版
岩下宣子監修
主婦の友社刊
暮らしもおつき合いの幅も縮小していく大人世代。そんな中でも、最低限おさえておきたい冠婚葬祭のしきたりや、お中元、お歳暮、お見舞いなど、日々のおつき合いにおけるお金の相場やマナーをわかりやすく解説。年金生活者やそのプレ世代が、負担を減らしながらも気持ちをしっかりと伝えるために役立つ常識が満載です。