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【らんまん】夜祭で、かんざしを綾(佐久間由依)に渡せずしまう竹雄(志尊淳)。詩的で美しい演出にも注目

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田幸和歌子

夜の狭い路地を幾度も曲がりながら進む描写は、万太郎の心象風景のようだし、その後に続く万次郎の独白は、海の底のように暗い。実際に電気がなかった時代、障子越しの月明りのみが落ちる室内は非常に暗かったのだろうが、それが万次郎の大きな悔いと重なり合う。

「(自由という)その言葉、いまとなってはどんだけ憎んだか」と言う万次郎は、その理由について「知らんままでおったら、この歳になった今も胸の内を掻き立てられることらもなかったろう。気鬱の病にかかることもなかったろう」と語る。そんな「自由」を自分自身が捨ててきたという万次郎は、植物が自分にとってのそうした存在だと語る万太郎に、シーボルトの植物図鑑を手渡す。

シーボルトは、万太郎が幼い頃から憧れていた植物学者・野田基善(田辺誠一)に会った際、教えてもらった存在だ。しかし、いざ手にすると、感動するでも、圧倒されるでもなく、冷静にその図鑑の長所と短所を指摘する万太郎。本当は季節ごとの植物の情報が必要で、日本に暮らしていないと日本の植物について知るのは無理であること、植物の絵がよく描けることや、英語で読み書きができることが必要であることなどから、日本の植物図鑑を作る適任者は自分しかいないと確信する。気づくと、夜が明けていた。

一方、綾と竹雄は夜祭に参加した後、自分の道を進む決意をする。提灯の明かりに照らされた綾の頬、それを見つめる竹雄。竹雄の手を引き、踊りの輪に加わる綾。綾の決意を聞き、簪を渡せずしまう竹雄――灯籠や提灯の明かり越しに描かれる一連の寄りと引きのシーンは、ひとときの夢のようで、詩的で美しい。

「自由」を求める思いについて綾は自身を「強欲」と言い、それを竹雄は「前に向かうための力」と言った。万太郎を逸馬は「とんだ傲慢、ごうつくばり」と頼もしそうに笑った。3人の「自由」はここからどのように描かれていくのだろうか。

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