【らんまん】夜祭で、かんざしを綾(佐久間由依)に渡せずしまう竹雄(志尊淳)。詩的で美しい演出にも注目
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田幸和歌子
朝ドラを見るのが1日の楽しみの始まりとなっている人、多いですよね。数々のドラマコラム執筆を手がけている、エンタメライター田幸和歌子さんに、NHK連続テレビ小説、通称朝ドラの楽しみ方を毎週、語っていただきます。より深く、朝ドラの世界へ!
長田育恵作・神木隆之介主演のNHK連続テレビ小説『らんまん』の第4週「ササユリ」が放送された。本作は、明治の世を天真らんまんに駆け抜けた高知出身の植物学者・牧野富太郎の人生をモデルにしたオリジナルストーリー。
今週は万太郎(神木隆之介)、綾(佐久間由衣)、竹雄(志尊淳)がそれぞれ好きなこととやるべきこと、置かれた場所に悩む中、「自由」という言葉に出会ったことで、目覚めていく様が描かれる。脚本の妙もさることながら、「演出」にもぜひ注目したい週だ。
東京から戻った万太郎は、植物の研究を諦め、峰屋の当主として生きると宣言する。しかし、それが本意ではないと察したタキ(松坂慶子)は、万太郎に姉の綾と夫婦になるよう命じる。実は綾はタキの娘の子で、両親がコロリで亡くなっており、病弱な万太郎にもしものことがあったときのため、本家を絶やさないよう引き取って来たのだ。綾と万太郎は従妹のため、夫婦になれるとタキは言う。
これは、「当主なのに」家業よりも植物の研究をしたい万太郎と、「女なのに」嫁ぐよりも峰屋で酒造りをしたい綾の、「歪な二人」のそれぞれ好きなことを尊重する苦肉の策で、ある意味ウィンウィンだが、長年姉弟として暮らしてきた二人にとって、心がそれを受け入れられるわけがない。
綾は抵抗し、家を飛び出して、綾が思いを寄せる蔵人・幸吉(笠松将)の村に向かう。しかし、そこで綾が見たのは、畑仕事をする幸吉に寄り添う妻の姿だった。
ここで幸吉が綾の姿に気づくことなく、綾の一方的な思いで終わらせたこと、走り去る道すがらつまずいて一輪の花――ササユリとその花を咲かせた周囲の自然に目を向けさせるのは、綾の気丈さを際立たせ、尊厳を守る非常に美しい演出である。
一方、綾を追って高知に向かった万太郎は、自由民権運動の集会で綾の姿を見つける。しかし、政治結社のリーダー・早川逸馬(宮野真守)の演説の「無知蒙昧の卑しき民草」という表現が聞き捨てならず、口をはさんでしまう。壇上に引きずり出された万太郎は言う。
「名もない草はその名を知らんだけじゃ。名を知らんだけじゃなく、毒があるかクスリがあるか、その草の力を知らん。どんな草やき同じ草はひとつもない。一人一人生きる力を持っちゅう」
草の話をしている万太郎と、それを勝手に自由民権運動的解釈で聞きながら「天賦人権!」「生存の権利!」「同志の団結!」と興奮した様子で合いの手を入れる逸馬のやりとりは、トンチキなのに、エネルギーに溢れていて、不思議と涙が出そうになる。
さらにそこから「自由」について知りたいと言う万太郎は、綾と竹雄を残し、逸馬の率いる「声明社」に行き、さらに逸馬からジョン万次郎(宇崎竜童)を紹介される。