寝る前に【完全なオフモードになる方法】を、禅僧 枡野俊明さんに聞く
不安や悩みだけでなく、うれしいことやテンションが上がるようなことも、夜になったらいったん忘れるのがおすすめだそうです。すこし意外かもしれませんね。
「今日という日の余韻を、できるだけ夜に引きずらないこと」の大切さを、枡野さんは教えてくださいます。
さて、では実際に、さまざまに湧き上がってくる感情をどうやって忘れていくといいのでしょう。そのために、オンとオフの境界線をつくる方法を『悩みを手放す21の方法』から教えていただきます。
あなたの「心の山門」はどこにありますか?
同じように、私たちの生活の中にも「心の山門」が必要です。たとえば1つ目の山門は職場の玄関。ここを出たら「仕事は終わった」と自分に言い聞かせましょう。2つ目の山門は最寄りの駅やバス停、車の中。家で過ごす楽しい時間について考え始めましょう。そして自宅の玄関が3つ目の山門です。ここまで来たら昼間のことはすっきり忘れて、完全なオフモードになりたいものです。
ひとつひとつの門を越えていくごとに、私たちの心には「結界」がつくられていきます。そこに日中の不安や心配事を招き入れてはいけません。そして布団に入ったとき、完全なくつろぎモードになることができれば完璧です。
仕事をしていない人や在宅勤務の人は、時間で区切りをつけるのがいいと思います。たとえば就寝の3時間前までに、仕事や家事などの「すべきこと」を終わらせてしまいます。終わらなくても、自分の中で「あとは明日」と区切りをつけてしまうのです。そして「就寝の2時間前までには入浴をすませる」「1時間前になったらスマホもテレビも見ない」など時間を決め、自分なりのルーティンにしてしまいましょう。
禅宗の修行僧は、眠る前に必ず坐禅をします。呼吸を整え、心を静謐にしたうえで就寝するので、深く眠ることができるのです。一般の方に坐禅をしなさいとは言いませんが、眠る前にゆっくりと深呼吸し、心を落ち着けてほしいですね。
そんなふうに夜の過ごし方を決めてしまうことで、飛行機がゆっくり高度を下げて着陸するように、就寝に向けてソフトランディングできると思います。日中のさまざまな 感情を上手に手放すことは、今日という一日に未練を残さないことにもなります。
「昨日今日不同(さくじつ、こんにちとおなじからず)」という禅語があります。過ぎた日は二度と戻ることはなく、今日のつらさを明日に引きずる必要もありません。明日は今日よりよい日だと信じて、ゆっくり眠りにつきましょう。
<一禅チャレンジ>
夜の明かりは穏やかに
穏やかな夜の眠りを邪魔する最大のものは電子機器です。私の場合、夜9時半になったらパソコンも携帯電話も一切見ません。モニター画面の明るい光は交感神経を刺激して、脳の働きを活発にしてしまうのです。室内の照明も穏やかな電球色にします。LEDライトならボタンひとつで切り替えができるものも多いので、上手に使ってみてください。眠る前にはアロマをたきながら、ヒーリング系の音楽を流すのもいいかもしれません。読書をするならハラハラドキドキの小説ではなく、画集や写真集、詩集などがいいと思います。ゆったりとページをめくり、穏やかな眠りへいざなってください。
※この記事は『悩みを手放す21の方法』枡野俊明著(主婦の友社)の内容をWEB掲載のため再編集しています。
悩みを手放す21の方法
枡野俊明著
主婦の友社刊
戸惑ったりイライラしたりの毎日、そんな心を支えてくれるのが「禅」の考え方です。禅というと、坐禅を組むことが思い浮かびますが、禅では生活そのものが修行なのです。歩く、立ち止まる、座る、横になる。そんな日常の立ち居振る舞いすべてが修行になります。この本では、生活の中に禅的なものを取り入れる21の行動(形)を、禅僧である枡野俊明さんが自ら手本を示しながら教えます。まずは呼吸する、立つ、座るといった「形」を整えることから。そして、食事や生活習慣などの行動、コミュニケーションについて。内面(心)を整えるためには、まず形(行動)から入るのです。行動から入れば、心はあとからついてきます。大切なのは、頭で考えたり悩んだりする前に「行動する」こと。この本を読み終える頃には、禅的生活がきっと身についているはずです。困ったり怒りが湧いてきたら、丹田を意識して、息を吐くこと。それも立派な「禅的生活」です。