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「やまとなでしこ」桜子から「あんぱん」登美子へ。松嶋菜々子×脚本 中園ミホのメッセージとは?王道ラブコメ「やまとなでしこ」を一気見

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藤岡眞澄

放送中の朝ドラ「あんぱん」を見て、松嶋菜々子×中園ミホ——このコンビに「あれ?」と心が動いた方も多いのではないでしょうか。2000年に放送された伝説のラブコメ「やまとなでしこ」。脚本は中園ミホ。玉の輿を夢見る”スッチー” 桜子(松嶋菜々子)と、魚屋の青年 欧介(堤真一)に、毎週胸をときめかせました。MISHAの「Everything」が流れると、名シーンがよみがえります。名作を久しぶりに一気見した感想をお届けします。

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桜子を演じた松嶋菜々子が凄かった

25年前。アラサー女子、婚活世代を中心に、視聴者をキュンキュンさせ、テレビの前に釘づけにした1本のドラマがあった。

それは、松嶋菜々子主演、フジテレビ「月9」枠で放映された『やまとなでしこ』。平均視聴率26.4%、最高視聴率34.2%。21世紀のラブコメでこの視聴率を抜いたドラマは未だにない。

Netflixで配信スタートしたと知り、懐かしさのあまり見始めたら、もう止まらない。睡眠&風呂界隈キャンセルして一気見した。

幼いころに味わった貧乏暮らしのトラウマで、「一番大事なものはお金」が人生哲学になった神野桜子(松嶋菜々子)。その美貌と客室乗務員(本編ではスッチー呼びも。そんな時代だ)というステータスを武器に、最上級の玉の輿を夢見て、金持ち相手の合コンに励む日々。

収入のほぼすべてをハイブランドの服や靴、バッグなど“外見”に注ぎ込み、ボロアパートに住んでカップラーメンをすする。1500回目の合コンで出会った大病院のイケメン御曹司・東十条司(東幹久)のプロポーズを受けても、「もっと上のお金持ちが現れるかも……」と諦めず、合コン三昧を続ける。

そんな桜子の目の前に、外科医を名乗り、中央競馬の馬主のピン(これぞ桜子にとっては大富豪の象徴)を胸につけて現れたのが、中原欧介(堤真一)。だが、実際の欧介はつぶれる寸前の魚屋だった……。

恋が勘違いから始まり、価値観の違いで噛み合わない会話に笑いを誘われながらストーリーが展開していくラブコメの王道。ラブコメは主役が嫌われてしまっては台無しだ。

特に、ルッキズムとあざとさ全開で金持ち男子を次々落とし、「女が最高値で売れるのは27(歳)。それを超えたら値崩れを起こすわ」と言い放つ桜子。一歩間違えれば、嫌われるリスクは大きい。

だが、自分の欲しいものにロックオンしたら、たった一人で真正面から突き進んで手に入れようとする桜子のピュアでブレない生き方。しかも、嫉妬したり、人の足を引っ張ったりはしないから、見ていて清々しいし、応援したくなる。中園ミホの脚本が冴えている。

そして、そんな桜子を演じた松嶋菜々子が凄かった。

身長172cmの抜群のスタイルでハイブランドを余裕で着こなしてこその“合コンの女王”。女性誌がこぞって“桜子ファッション”を特集した。婚約者の前や合コン、機内で見せる計算高い“ビジネス笑顔”と、後輩スッチーと本音トークするときに見せる“ぶっちゃけ素顔”—— 2つの表情の間をくるくる行ったり来たりする小悪魔的チャーミングさはもはや無双。その可愛い声も、間違いなくモテ声だ。

そして驚くべきは、25年たった今も、松嶋菜々子の桜子は色褪せることなく、生命力にあふれていることだ。

それは、同じく中園ミホ脚本の朝の連続テレビ小説『あんぱん』(NHK)で松嶋菜々子が演じる主人公の母・登美子の姿にも通じる。夫との死別、実子との別れ、金持ち再婚夫との離婚を経ても、一人の女性として輝きを失わない登美子。桜子や登美子の姿には、女性がどんな逆境に巡りあっても、堂々と骨太に生きていってほしいという中園ミホのメッセージが込められているようだ。

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