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ダウン症の娘とふたり一緒に死のうと思ったことも。 その先に見えた希望とは?書家・金澤泰子さんインタビュー

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ゆうゆう編集部

泰子さんを「お母さま」と呼ぶ翔子さん。「料理が得意で、私の分も作って届けてくれるんですよ。『翔子のウーバーイーツ』ね(笑)」

娘と私の役目を果たしていきたい

「翔子さんこそが、私たちの希望です」。ダウン症の子をもつ親から、そんな声が届くという。

「昔に比べれば、育てやすい社会になったと思います。でも、わが子の障がいを悲観する親御さんは少なくありません。その気持ち、痛いほどわかるんですよ。翔子と私でよければお役に立ちたいです」

公開中の映画『共に生きる 書家金澤翔子』の出演を受けたのも、そんな思いがあったからだという。

「昔、画家の山下清さんのご活躍を描いた映画があると聞いて、とても勇気づけられたんです。障がいがあっても、みんなを喜ばせることができるんだと。翔子にも、そんな役目があるのかもしれません。

それに、ダウン症の子たちは、みんな優しくて、人の気持ちに寄り添えるんです。翔子もそう。困っている人を見ると、助けたくなってしまうんですよね。染色体が普通より1本多いのですが、その1本の正体は『愛』じゃないかと思うくらい(笑)。そういうことも知ってほしくて」

翔子さんの活躍を見守り、支える今がとても幸せだという金澤さん。自身のために、何かやってみたいことや、挑戦したいことは?と聞いても「ないですね。私は書道しかできませんから」と、きっぱり。

実は金澤さん、異色の経歴をもっている。学生時代、多くの文化人が集うサロンの常連で、芸術や文学の議論に興じる毎日を送ったという。

なかでも交流を深めたのが、当時は教職に就いていた、歌人の馬場あき子さん。以来、つかず離れずのおつき合いが続いている。

「馬場さんの映画の題字を翔子が手がけることになって、久しぶりにお話ししました。昔と変わらず、機知に富んでいてアグレッシブで、魅力的な方です。あんなふうに年齢を重ねることができたら素敵ですね」

映画『共に生きる 書家金澤翔子』に出演

金澤さん親子の日常に密着した話題のドキュメンタリー映画。苦難をともに乗り越えてきたふたりの絆と、書に向かう強い気持ちに胸が熱くなる。多くの人の目の前で翔子さんが書く「席上揮毫」のシーンは圧巻だ。

出演/金澤翔子、金澤泰子 他 
監督/宮澤正明 
配給/ナカチカピクチャーズ 
上映予定/下高井戸シネマ(東京都)8/5~、宇都宮ヒカリ座(栃木県)8/4~、シネマイーラ(静岡県)上映中、静岡シネギャラリー(静岡県)8/4~、上田映劇(長野県)上映中、長野相生座・ロキシー(長野県)8/25~、塩尻東座(長野県)10/14~、京都シネマ(京都府)上映中、八丁座(広島県)上映中、シアター・シエマ(佐賀県)8/4~。以降、順次上映予定。

※この記事は「ゆうゆう」2023年9月号(主婦の友社)の内容をWEB掲載のために再編集しています。


ゆうゆう2023年9月号

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