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【らんまん】最終回。遠い未来の人々のために、わずかでも自分が何を残せるか。そんな問いを突き付けられる作品だった

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田幸和歌子

朝ドラを見るのが1日の楽しみの始まりとなっている人、多いですよね。数々のドラマコラム執筆を手がけている、エンタメライター田幸和歌子さんに、NHK連続テレビ小説、通称朝ドラの楽しみ方を毎週、語っていただきます。より深く、朝ドラの世界へ!

【らんまん25週】カラー化した震災当時の映像が差し込まれる、緊迫感ある描写。NHKの技術力を見た

長田育恵作・神木隆之介主演のNHK連続テレビ小説『らんまん』が、第26週「スエコザサ」をもってとうとう幕を下ろした。

舞台は昭和33年に飛び、サプライズゲストが2人登場する。

1人は、万太郎(神木)が住んでいた家に片付けアルバイトで訪れる藤平紀子として、語りの宮﨑あおい。もう一人は、万太郎の次女・千歳役を本田望結から引き継ぐ松坂慶子。万太郎の祖母・タキを演じていたときとは違う、本田望結に似た大らかで柔らかな雰囲気だ。

千歳の依頼は、万太郎の遺した40万点の標本を都立大におさめるにあたり、整理して欲しいというもの。仕事の重大さを知り、いったん辞退してその場を去る紀子だったが、思い直して引き返す。標本が関東大震災や空襲の中でも家族に守られてきた思いに気づき、自分も次の人に渡す手伝いをしたいと思ったためだ。

そこから紀子は標本整理のため、万太郎の行動録を作る。ここで『らんまん』が紀子視点で描かれた物語であったことがわかる。壮大さと同時に、最終週タイトルから病を患った寿恵子との別れが見えているにも関わらず、後の世に続く未来を見せることで、別れの寂しさを与えない、非常に巧みな構成だ。

そこから時は図鑑完成の地点に戻る。万太郎は波多野(前原滉)に、大学や大学院を卒業していなくとも論文と学識が同等と認められれば博士になれると言われ、徳永名誉教授(田中哲司)と波多野の推薦のもと、理学博士になるよう勧められる。

まだ成し遂げていないと固辞する万太郎に、波多野は言う。
「傲慢だよ。槙野万太郎は自分の意思でここまで来たと思ってるでしょ。槙野万太郎がここにいるのは、時代なのか摂理なのか、そういうものに呼ばれてここにいるんだ」「賞賛と引き換えに学問に貢献する立場と義務を」

さらに、理学博士になったら図鑑が売れる、大増刷だと商売人らしく背中を押す寿恵子(浜辺美波)。

異なるアプローチからの2人の言葉は、これまで全ての研究を一人で行って来た万太郎の心を強く突き動かす。そして、病に侵された寿恵子の命が尽きぬうちに、2人の大願である図鑑を完成させるため、野宮(亀田佳明)に植物画を、虎鉄(濱田龍臣)に解説文を、藤丸に菌類担当を、波多野の紹介による大学院生たちに校正を、佑一郎(中村蒼)に索引作りお願いし、丈之助(山脇辰哉)らもそこに巻き込まれていく。

綾(佐久間由衣)と竹雄の新しい酒「輝峯」ができ、みんなで祝った後、いよいよ万太郎の図鑑も完成。謝辞には仲間や家族、最初の師・蘭光先生(寺脇康文)や万太郎に東京大学植物学教室への出入りを認めた田邊(要潤)、亡き娘・園子の名前も記されていた。

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