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89歳 多良美智子さんの楽しいひとり暮らし。元気の源は食べること。自炊が面倒にならない工夫とは

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大橋史子(ペンギン企画室)

高齢でも一人暮らしになっても、住みなれた家で過ごしたいと考える人は多いと思います。89歳の多良美智子さんは、ずっと暮らしている団地で一人暮らし。孫と始めたYouTubeチャンネル「Earthおばあちゃんねる」の撮影をしたり、高齢者コミュニティや市民センターで習い事や趣味の会に参加したり、家で針仕事や読書をしたりとマイペースな毎日を送っています。そんな多良さんの元気の源は食べること。自炊が面倒にならないコツをうかがいました。

Profile
多良美智子さん
(たら・みちこ)昭和9年(1934年)長崎県生まれ。8人きょうだいの7番目。27歳で結婚し、神奈川県の現在の団地に引越しをする。夫と子ども3人の5人家族でしたが、子どもたちは独立し、夫は9年前に他界。2020年に孫と始めたYouTubeチャンネル「Earthおばあちゃんねる」は登録者数16万人をこえる。著書は『87歳、古い団地で愉しむ ひとりの暮らし』『88歳ひとり暮らしの 元気をつくる台所』(共にすばる舎)。

3食全部がんばらない。私が作るのは昼食だけ

好きな場所に出かけたり、家事をして家を整えたり、マイペースに一人暮らしを楽しんでいる多良美智子さん。そんな多良さんの元気の源は、食べることです。子どもの頃から食べることが好きで、今でも食事は1日の一番の楽しみです。

「3度の食事は自分で用意します。そのほうが、お金がかからないし、自分の好みの味になります。何を食べようかなと献立を考えるのも脳トレになるし、1日1回近くのスーパーに買い物に行くのもいい運動になります」

自炊が面倒に感じるようになるシニア世代ですが、多良さんはそんなことはないのでしょうか。

「3食頑張っていたら、嫌になるでしょうね。私が作るのは昼食だけです。朝食は、スムージーとゆで卵とりんごと決めています。夕食は晩酌をするので、お酒のお供に夏は冷奴、冬は湯豆腐メインに、作り置きおかずなどを添えるだけです。調理らしいことはしないので、用意に10分とかかりません」

昼食は、定食スタイルでしっかり食べる多良美智子さん。1日の中でメリハリをつけて。

メニューを考えて作るのは昼食だけです。肉や魚、卵のたんぱく質を使った主菜、野菜を使った副菜、ご飯や麺などの炭水化物をバランスよく食べるようにしています。定食スタイルが多いですが、うどんやパスタなどのワンプレートにすることも。自分の食べたいものを作ることが、自炊のモチベーションになります。

調理は簡単に。味付けは食卓ですることも

「調理は簡単がモットーです。切っただけ、茹でただけ、醤油と砂糖で煮ただけというような、レシピ以前のものばかりです」と、笑う多良さん。

ちくわやさつま揚げが好きなので、切っただけで器に盛り付けることも。これだけでも、立派な1品になります。手軽に食べられる練り物は、たんぱく質不足が気になる高齢者には、便利な食材です。さつま揚げは、小松菜や白菜と一緒に醤油と砂糖で煮ると、出汁いらずの時短煮物になります。

電子レンジも活用していますが、特に、よく作るのがキャベツの千切りレンチン。千切りにしたキャベツを電子レンジで、3分ほど加熱してやわらかくします。生の千切りキャベツが食べにくくなったので、試してみたら大正解。食べやすくなって、サラダにしたり、肉のおかずの付け合わせにしたりと、よく登場するようになりました。

「キャベツは多めにレンチンして、残った分は保存容器に入れて翌日の野菜炒めにすることも。適度にシンナリして、炒める時間が短くなるし、油の量も減らせます」

調理をラクにするために、食卓で味付けすることもあります。お気に入りのタレは、酢醤油。市販のポン酢でもいいのですが、自分で醤油に酢を混ぜたほうが、好みの味になることに気がついたそう。

「酸っぱいのが好きなので、酢は多めです。市販品より安上がりよね。これに柚子胡椒を添えると、本当においしいんです」

酢醤油に合うのが、ゆで鶏。沸騰した鍋に鶏もも肉を入れて、火を止めて数時間置くだけの、味付けいらずの簡単メニューです。薄く切って器に盛り、酢醤油と柚子胡椒をつけながら、いただきます。晩酌のお供の湯豆腐も、酢醤油をタレにしています。

「紹介するのが恥ずかしいくらい簡単よね。でも、簡単でないと続きませんよ」

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