年金暮らしで夫に先立たれたら、年金はどうなりますか?井戸美枝さんがアドバイス【2023年お金部門人気記事TOP3】
夫が繰り下げ、繰り上げをしていても、遺族厚生年金額に影響しない
夫が繰り下げ待機中に亡くなった場合、妻など遺族がまだ請求していない老齢年金をまとめて受けとることができます。これを「未支給年金」といいます。
まだ請求していないので、65歳時点で受けとれるはずだった年金額で待機していた期間分を受け取ります。
遺族厚生年金額も、繰り下げによって増額は反映しません。夫の本来の年金記録に基づいて計算された老齢厚生年金の4分の3になります。
ちなみに、夫が年金を繰り上げ受給していた場合、年金は繰り上げた月数分に応じて減額されますが、夫が亡くなって受けとる遺族厚生年金も本来の老齢厚生年金額から計算されます。減額はされません。
未支給年金を受け取るには、遺族が請求する必要があります。請求の期限は5年。繰り下げ受給をしている場合は、時効の起点が65歳になるので、早めに請求しましょう。
ワンポイント! 遺族厚生年金は非課税!
夫に先立たれておひとりさまになると、多くの場合、年金はかなり減少します。
でも、一方で、遺族年金は「非課税」。妻の年金額にもよりますが、多くの場合、所得税や住民税がかからず、国民健康保険料や介護保険料もかなり軽くなります。
妻に厚生年金がある場合は、3つのパターンで金額を比較
共働きだったり、妻に短期間でも厚生年金加入期間がある場合、夫が亡くなったあとに受け取る厚生年金は、以下の3つのうちもっとも多い金額になります。
① 夫の老齢厚生年金の4分の3
② 夫の老齢厚生年金と妻の老齢厚生年金を半分ずつ
③ 妻自身の老齢厚生年金
例:夫の老齢厚生年金が11万円、妻の老齢厚生年金が3万円の場合
① 夫の老齢厚生年金の4分の3
11万円×3/4=8万2500円
② 夫の老齢厚生年金と妻の老齢厚生年金を半分ずつ
11万円÷2+3万円÷2=7万円
③ 妻自身の老齢厚生年金
3万円
支給額は、もっとも多い①8万2500円。まず妻の老齢厚生年金3万円と遺族厚生年金が5万2500円になります。
プロフィール
井戸美枝
ファイナンシャルプランナー(CFP認定者)、社会保険労務士、国民年金基金連合会理事。生活に身近な経済問題、年金・社会保障問題が専門。「難しいことでもわかりやすく」をモットーに、雑誌や新聞に連載を持つ。『親の終活 夫婦の老活 インフレに負けない「安心家計術」』(朝日新書)、『一般論はもういいので、私の老後のお金「答え」をください!増補改訂版』(日経BP)など著書多数。
ホームページ:http://mie-ido.com
Twitter:@mieido
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