はるな愛さん「体と心の性の不一致、それが自分の個性だと気づいたときに人生が変わりました」【山あり谷あり私の人生】
時間はかかったけれど居場所を見つけられた
ブレイクしたのと同時期に、はるなさんはもう一つ大きな挑戦をしていた。それは世界一美しいトランスウーマンを決めるコンテスト「ミスインターナショナル クイーン」へのエントリーだった。「あらびき団」の収録を終えたはるなさんは、タイに飛び世界大会に臨んだ。
「父にカミングアウトしたとき、『やるんやったらその道で絶対に一番を取れ』と言われたこともあって挑戦しました。でも周りの美しさに圧倒されて、自分の個性が全く出せず結果は4位。事務所には『1位を取るからしばらく帰れないよ』と豪語してきたので、落ち込みながら結果報告の電話をかけたら、『とにかくすぐに帰ってこい!』と。何事かと思ったら、『あらびき団』の放送後、仕事の依頼が殺到しているというんです」
そこからは睡眠時間も満足に取れないぐらい「タレント」としての忙しい日々が始まった。夢見ていた大ブレイクだった。着替える時間もなく、衣装のまま移動していると、みんなが「愛ちゃん、愛ちゃん」と声をかけてくれた。
「ある日新幹線で移動していてトンネルに入ったとき、窓に映った自分の顔を見ていたら突然泣けてきたんです。『みんなが愛ちゃんと呼んでくれるのは、あの大西賢示なの?』って(笑)。衣装のまま涙を流して、『あのとき死なないでよかったね、時間がかかったけど居場所を見つけられてよかったね』と、自分に語りかけました」
生きてさえいれば、思いもよらぬ出会いと幸せが待っている
今振り返れば、一番認めたくない、最大のコンプレックスだったことが、実は自身の一番の「個性」だった。さまざまな葛藤を乗り越えて、自分らしく無理なく嘘をつかずに生きてきたから、「芸能人になりたい」と言ったときに、そのフィールドへ連れていってくれる人に出会えたと感じている。
「私がもし普通の女の子だったらこうして皆さんのもとにたどり着けていたかどうか、自信はないですね。皮肉なもので、一番つらかったことが、今、一番大切な宝物になっている。そう思うと、生きるしかないんだなと思います。生きていたらその先には思いもよらぬ出会いと、そのまた先に待っている幸せがある。それは身をもって痛感しています」
はるなさんは現在、タレント活動や飲食店経営の他に、被災地支援に積極的に出向いたり、子ども食堂を開いたり、弱い立場の人たちに対する支援も地道に行っている。
「私はつらい幼少期を過ごしましたが、今芸能界で仕事をさせてもらえています。皆さんのおかげで人に寄り添って考える『ポケット』に、少し空間ができたと思うんです。だから今度は私ができることをする。だって、お互いさまですから。つらい思いをしている人の苦しみを代わってあげることはできないけれど、黙って横にいることはできる。やはり人を動かすのは人の力。私が受けたものをお返ししていければうれしいですね」
※この記事は「ゆうゆう」2024年6月号(主婦の友社)の内容をWEB掲載のために再編集しています。
取材・文/志賀佳織
ゆうゆう2024年6月号
健康長寿を目指すゆうゆう世代にとって、今最も関心を集めているのが「腸活」です。そこで、今月は、「体も心も喜ぶ『腸活』」を大特集。タレント・松本明子さんの「腸活ライフ」、「腸活レシピ」など、盛りだくさんの内容でお届けします。インタビュー特集は「人生山あり谷あり 私の場合」。タレントのはるな愛さん、女流棋士の清水市代さん、主婦の多良久美子さん。三者三様の物語に引き込まれます。旅企画は「北陸の絶景とグルメを堪能する旅」。北陸のグルメや絶景を楽しむことで、震災復興につながれば、との願いを込めて。
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