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【70代のキッチンリフォーム】老後ではなく「今を楽しむ」ための改装の工夫とは? 加藤タキさんの実例

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ゆうゆう編集部

好きなものに囲まれて心豊かに人生を楽しむ

読者の中には老後の暮らしを見据えてリフォームを決断する人もいるだろう。70代でキッチンリフォームを行った加藤さんは、どんな老後を思い描いているのだろうか。

「このマンションはもともと段差のないフルフラットなので、バリアフリーに関してはもうOK。今後考えるとしたら手すりをつけるなどでしょうが、夫も私も今のところはまだ必要としていません。私は『目指せ100歳、現役』だし、夫もまだ仕事を続けている。今はこのままの暮らしが快適です」

安全対策は必要に応じて。すべてを利便性優先にはしたくないと話す。そこにはこんな思いも。

「私の母は104歳で亡くなりましたが、95歳のときと100歳のときに骨折しました。その年で歩けなくなるとぼけっとしてしまいがちですが、母は新聞や本を欠かさず読み、テレビやラジオもよく視聴して、頭はいつもフル稼働。『頭も手先も使わなければどんどんさびていく』と言って、私たちが誕生日にプレゼントした食器を指先まで神経を使ってトレイにのせて、大事にキッチンまで運んでいました。体のどこかが悪くなっても前向きで、気持ちで負けていない。そんな母の姿を見てきたので、あまり安全・安心ばかりにとらわれる必要はないと思っているんです」

家族が集うダイニングはゆったりとして心地いい空間。

ダイニングルームの食器棚には来客用のグラスや食器を収納。

東日本大震災のときは食器棚の扉が開いてしまい、グラスなどが床に落ちて粉々に。「それ以来、地震への備えをどうするか考えていました。そこで思いついたのが、この写真の対策。1膳分の箸を輪ゴムで留めて扉の取っ手に通し、リボンを結んでストッパーにしています」

加藤さんのお宅を見渡すと、あらゆるところに家族の写真や思い出の品々が飾られている。

「好きなものに囲まれて暮らすのは心地よく、気持ちも豊かになります。高齢者だから割れない器にするのではなく、好きな器が割れないように大事に扱うことが頭を使うことにもなる、という考えです。『年だから』と言い訳せず、一度しかない人生を楽しみたい。そして、楽しいの基準は人それぞれ。自分を知り、家族のあり方を知ることが快適な暮らしへの近道だと思います」

食器で季節感のある食卓を演出。

104年の人生をまっとうした母の介護で老後の住まいをイメージできました

「足が弱くなった母のために廊下やトイレに手すりをつけたり、ベッドの横にポータブルトイレを置いたり。その経験から、自分たちの老後もイメージしやすくなりました」

※この記事は「ゆうゆう増刊」2022年11月号(主婦の友社)の内容をWEB掲載のために再編集しています。

撮影/鈴木希代江

【後編に続く】

※2024年2月9日に配信した記事を再編集しています。


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