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【虎に翼】玉(羽瀬川なぎ)のデリケートな思いをあっさり知らせてしまう相変わらずの寅子(伊藤沙莉)だが、結果オーライだ

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田幸和歌子

涼子と玉の話に戻る。涼子と今も一緒に過ごしていることが分かり嬉しくなった玉だが、空襲によって車椅子生活を送る身となっていた。いっぽう涼子はといえば、実家が背負った莫大な借金のため屋敷を手放し、夫とも離婚。新天地として二人で手を取り合いながらがんばりここまできたというわけだ。女学生当時からそうではあったが、お互い支え合う関係に流れるのはお嬢様とそのお付きではなく、立場を超えた強い友情でありある種の「愛」であることは伝わっていた。

そんな二人でありながら、玉は歩けなくなってしまった自分が、身分や家族から解放されたはずの涼子なのに、その人生を奪ってしまっているのではないかと悩む。そして、身につけた英語力で受験生に英語を教えられるような存在となっている玉は、寅子に障がい者が職業訓練をしながら生活支援を受けられる施設の紹介を頼む。寅子は玉のそんな思いを涼子に伝え、涼子もまた大きなショックを受ける。涼子は涼子で、多くのものを奪われてしまった中で玉まで失ってしまったらという思いから縛り付けているのではないかと悩んでいた。

これまでは立場の違いから決してその上下は変わることがなかった涼子と玉だが、「あなたなしの人生は考えられない。私の親友になってくれませんか?」という玉に、「あなたはもう親友ですよ」と返す涼子。英語でなされたこのやりとりによって二人は本当の意味で「友」となることができた。本音を伝えるという意味でも英語で伝えるということは大事なことだったのだろう。

いっぽうで玉のデリケートな思いをあっさり知らせてしまうところは相変わらずの寅子ではあるが、それによって二人の絆はより強いものとなったことは結果オーライではある。

「虎に翼」第84回より(C)NHK

「友」は、心強い存在となることもあるが、いっぽうでその存在を必要としない生き方もある。それを優未が寅子とわれわれ視聴者に教えてくれた。

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