「生」ある者は必ず「死」を免れることはできない。一人たりとも！　例外なんて一人もいない。いつの日か、この私もこの世から消えてゆくのだ。「無」ということになるのだ。それもそんなに先のことではなく……。

だからこそ、「老い」や「死」をテーマにした映画は避けて来たような気がする。生きてゆく喜びや、おかしみを感じさせる映画が好きだったのだが……、この長編ドキュメンタリー映画『エターナルメモリー』には断然、惹き込まれた。感動させられた。

南米チリでは有名なジャーナリストのアウグスト・ゴンゴラと、国民的女優にしてチリで初の文化大臣となったパウリナ・ウルティア――この一組の夫婦の生と死を追ったもの。笑いあり涙あり。

雑な言い方をすれば「インテリ・カップル」だけれど、森林の中の古い家をリフォームした家で、本を読んだり散歩したり……というシンプルな暮らしぶり。満ち足りた日々。

そんな中、夫のアウグストがアルツハイマーを患ってしまった！ 日々、記憶は薄らいでいくばかり……。妻のパウリナが「長生きしたい？」と問うと、すぐに「ＮＯ！」と言う。「僕はもうダメだ、死ぬまでいっしょにいたい！」と子どものように泣き崩れる……。アルツハイマー、こんなにも人格を変えてしまうものなのかと胸が痛む。

それでもパウリナは笑顔でアウグストを抱きしめる。まるで母と子のような二人……。

監督は女性のマイテ・アルベルディ。『83歳のやさしいスパイ』（2020年）もアカデミー賞にノミネートされた実力派。1983年生まれ。頼もしい。8月23日公開。

さて、もう1件。8月16日公開の『美食家ダリのレストラン』もオススメしたい。こちらの舞台はスペイン。あの有名なサルバドール・ダリが住んでいた海辺の街のレストランの話。

時代は’70年代の半ば。店のオーナーは奇想の画家・ダリを崇拝。評判を呼んだら、いつか来店してくれるかと、革命的な（？）料理を次々と……という話。ほぼ喜劇。

くいしんぼうは必見でしょう。

※この記事は「ゆうゆう」2024年9月号（主婦の友社）の内容をWEB掲載のため再編集しています。

その他の映画情報はこちら▼▼

ゆうゆう2024年9月号

特集は「折れない」心と体の育て方です。まだまだ続きそうな猛暑。厳しい暑さに、体ばかりでなく心まで折れそうになっていませんか？　体と心はつながっています。ちょっとした気持ちのリセットや体へのアプローチ、食事の見直しで、心を引き上げ、体を鍛える。素敵な方々にそのコツを教わりました。デビュー50周年を迎えた女優の前田美波里さんや、「おくさまは18歳」で大ブレークし、国民的アイドルとなった岡崎友紀さん（歌手、俳優）、ほかにも、人気料理家の藤井恵さんには「折れない」体を作る大豆レシピ、整形外科医師の中村格子さんには「かんたん体操＆ストレッチ」、メンタルアップマネージャ^®️の大野萌子さんには「夏の気分の落ち込み対策」をお伺いしました。

※「詳細はこちら」よりAmazonサイトに移動します（PR）

詳細はこちら