【中野翠のCINEMAコラム】無実の息子を救うため 母は知恵と度胸をフル回転!『ミセス・クルナス vs. ジョージ・W・ブッシュ』
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中野翠
ユニークな視点と粋な文章でまとめる名コラムニスト・中野翠さんが、おすすめ映画について語ります。今回の映画は、実話から生まれた感動の物語『ミセス・クルナス vs. ジョージ・W・ブッシュ』。第72回ベルリン国際映画祭 銀熊賞受賞作です。
実話をもとにした映画です。
ヒロインのおばちゃんの行動のいろいろ、「私だったら、こんなに大胆でいちずな行動、できるかしら?!」と圧倒されます。
2001年と言ったらアメリカ同時多発テロで騒然となった年。イスラム過激派のテロ組織アルカイダがニューヨークの世界貿易センタービルと、ワシントン郊外の国防総省を狙って、飛行機もろとも突っ込んで、大変な惨事になった年だった。
一触即発的な世界情勢の中、ドイツに暮らすトルコ移民の一家に不吉な知らせが届く。長男のムラートが旅先のパキスタンでタリバンの嫌疑をかけられ、キューバの米軍基地の収容所に収監されてしまった、というのだ!
母のラビエは息子を救うため奔走するが、警察も行政も取り合ってくれない。打つ手ナシ! 絶望する中で、電話帳で見つけた弁護士ベルンハルトのもとを訪ね、窮状を訴える。そして、ベルンハルトのアドバイスを受け、アメリカ合衆国最高裁判所にまで出向いて思い切った手段に打って出る。その手段とは……?!という話。
ただもう息子の命を救いたい……それだけの願いに、かりたてられて、知恵と度胸をフル回転。その様子は頼もしくもあり、痛快でもあり。いわゆる「女は弱し、されど母は強し」――。
ヒロインを演じたメルテム・カプタンは金髪で、ズングリした体型。いかにも「普通のオバチャン」。ドイツではコメディエンヌとして活躍しているのだった。
監督/アンドレアス・ドレーゼン
出演/メルテム・カプタン、アレクサンダー・シェアー 他
5月3日より新宿武蔵野館、シネスイッチ銀座 他 全国順次公開
(ドイツ、フランス 配給/ザジフィルムズ)
© 2022 Pandora Film Produktion GmbH, Iskremas Filmproduktion GmbH, Cinéma Defacto, Norddeutscher Rundfunk, Arte France Cinéma
さて。日本映画では『お終活 再春!人生ラプソディ』という映画が、5月31日から全国公開。タイトル通り、マチュア世代にはピッタリの(?)映画。高畑淳子、石橋蓮司、橋爪功、長塚京三などベテラン勢が結集。
真一(橋爪功)と千賀子(高畑淳子)の夫婦は金婚式も無事終えたのだが……真一は物忘れが多くなり、審査を受けたら「要介護1」。一方、妻の千賀子は若い頃に夢見ていたシャンソンのレッスンに励むのだが……という話。リアルに身にしみつつ、クスクス笑わずにはいられない。
※この記事は「ゆうゆう」2024年6月号(主婦の友社)の内容をWEB掲載のため再編集しています。
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