「池松壮亮が死んだ母親と再会」近未来の親子の姿を描いた映画とは?【中野翠のCINEMAコラム】
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中野翠
ユニークな視点と粋な文章でまとめる名コラムニスト・中野翠さんが、おすすめ映画について語ります。
▼この映画の主人公は誰?▼
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AIが進化した近未来。「自由死」を選んだ母の本心は?
この映画を見て、フッと頭に浮かんだ言葉は「家族であっても謎はあり」––––。
今回の映画『本心』は、今から何年後のことだろう、近未来の話です。ロボットの登場によって職を失ったり、自殺も「自由死」と言いかえられたり、「ヴァーチャル・フィギュア」という仮想区間が作られたり……という世界が背景になっている。
物語は、こんなふう……。主人公の青年・朔也(池松壮亮)は工場で働いている。ある日、仕事中に同居の母(田中裕子)から電話があり、「帰ったら大切な話があるの」と告げられる。いそいで帰宅する途中、豪雨で氾濫する川べりに母が立っていることに気づく。助けようと川に飛びこんだ朔也だが、重傷を負い、1年もの間昏睡状態に––––。
朔也が昏睡から目ざめた時には、すでに母は亡くなっていた。生前に「自由死」を選択していたという。朔也の勤務先はロボット化の波を受けて閉鎖。世の中はガラリと変わっていたのだった。
朔也は友達の紹介で「ヴァーチャル・フィギュア」の仕事につく。仮想空間に任意の“人間”を作り出すという仕事。そんな最先端の仕事の中で、今は亡き母が恋しく、「自分が知らない母の一面もあったのでは? 最後に何を伝えようとしていたのか?」と思い、仮想空間で亡き母と会うことになったのだが……という話。
この映画の宣伝文句は「AIで“心”を再現したとき 人は何を失い、何を見つけるのか。」––––というものだが、それよりも母と息子の物語という印象。原作者は1975年生まれの作家・平野啓一郎。
『本心』
監督・脚本/石井裕也
出演/池松壮亮、三吉彩花、水上恒司、仲野太賀、妻夫木 聡、田中裕子 他
TOHOシネマズ 日比谷 他 全国公開中(日本 配給/ハピネットファントム・スタジオ)
© 2024映画『本心』製作委員会
さて。洋画では11月22日公開のイタリア・フランス映画『チネチッタで会いましょう』。
チネチッタと言えばヨーロッパ最大の撮影スタジオ。フェリーニ、ヴィスコンティ、スコセッシなど数々の名画を生み出したスタジオ。
それを背景にしたコメディ。監督は、『父 パードレ・パドローネ』に出演、監督としても数々の秀作を生み出したナンニ・モレッティ! 1953年生まれの71歳。映画好きだったら、いや、映画にあまり興味がなくても必見です。
※この記事は「ゆうゆう」2024年12月号(主婦の友社)の内容をWEB掲載のため再編集しています。
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