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【極悪女王】一番好きなのは「クレーン・ユウ」の物語 昭和の熱気と、令和の優しさが混在する傑作なのだ!

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田幸和歌子

インタビューで唐田は「レスラー12人の誰か」というオーディションに対し、マネージャーの勧めで長与が合っていると思うと言われ、長与のインタビュー記事など大量に調べてのぞんだこと、自分も含め他のレスラー役もみんなあて書きじゃないかと思うほど内面までそっくりだということを語っている(『MUSE オンライン』)。

世間からの「ゴリ押し」バッシングや恋愛騒動などを経てオスカープロモーションを退社、個人事務所を設立、仕事が激減していと言われる剛力と、東出昌大との不倫を報じられ、活動自粛に入っていた唐田。それぞれが2020年の人生の転機にこの作品のオーディションにのぞみ、手間暇かけ、情熱を注いだ役作りと体当たりの芝居で高い評価をもぎとった物語は、本編とリンクする部分が多々ある。

時間も予算もたっぷり使えるNetflixドラマの強みであり、役者の再生の場としても機能している。

一番好きなのは、「クレーン・ユウ」の物語

ちなみに、個人的に一番好きなのは、極悪同盟「クレーン・ユウ」の物語。

もともと落ちこぼれだったが、デビル雅美の命令で覆面レスラーになり、後に松本と「極悪同盟」を結成、「クレーン・ユウ」に改名。しかし、リングからおりると善玉レスラーとも仲良くするクレーンと、リングの内でも外でもヒールを貫く松本の間に亀裂が走る。この決裂が、松本の孤独を一層際立たせ、ヒールとしてさらなる高みへ突き進むきっかけとなる。しかし、そこから「ブル中野(堀桃子)」が即誕生する笑いと盛り上がり、最終地点での同期全員集結の最後のカギとなるのがクレーン・ユウだったくだりに、誰一人捨て置かない細やかな脚本に、真のシスターフッドを見た。

ただ1つだけ不安になるのは、こうした懐かしい昭和を描く熱いエンタメが登場するたび、昭和礼賛の声が溢れ、その一部に体罰・暴力・種々のハラスメント・ブラック労働等、時間をかけて一歩ずつ改善に向けて積み上げてきた先人たちの努力を蹴散らし、「昭和は良かった」の一言のもと、バックラッシュを起こそうとする声が出てくること。

おそらくこの物語を昭和で作っていたら、ダンプ松本物語はあっても、クレーン・ユウの物語に光が当てられることはなかったはずだ。その隅々まで行き届いた優しい視線こそが令和のドラマ。昭和の熱気と、令和の優しさが混在する傑作なのだ。

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