「それって『野口聡一さん』だからできませんか?」編集者のイジワル質問、どう答える…?【野口さん流・生き方のコツ】
2005年のスペースシャトル・ディスカバリーの打ち上げで日本人として6番目の宇宙飛行士となった野口聡一さん。宇宙飛行士として精力的に活動したのち、定年を前に2022年JAXAを退職。新たなキャリアをスタートさせました。
2025年2月に刊行された『宇宙飛行士・野口聡一の着陸哲学に学ぶ 50歳からはじめる定年前退職』(主婦の友社)では野口さん自身の経験を元に、「自己評価軸を持つことの重要性」や「人生の棚卸」について書かれています。今回は、ゆうゆうtimeの読者目線で知りたい「生き方のコツ」をおうかがいしました。
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――本書では定年前にJAXAをお辞めになられて「自己評価軸を持つこと」や「人生の棚卸」の重要性を記されていましたが、正直それは野口さんだからできるのでは?と思う読者も多くいると思います。もし野口さんが「女性で非正規で家事育児に追われてきた人生」だった場合、どうやって人生後半戦のモチベーションを上げていきますか?もしくはどういうアクションをしていきますか?
野口聡一さん(以下、野口) そうですね、特に50代前後の皆さんは就職氷河期世代ともいわれて、今もなお苦労されている方もたくさんいらっしゃると思います。ですが、自分の生きがいとはまた別の話として、現実問題、家族やパートナーなど日々属している集団の1日1日が、そして経済がまわっていく状態を継続可能にしておかなければなりません。これが家庭経済で、それぞれが自分の責任でやっていく必要があります。
私は著書の最後に「港に居る船は安全だ。しかし、それは船が作られた目的では無い」というアメリカ人作家の言葉を記しましたが、上記のようなことから“全員”が燃料タンクに燃料をいっぱい詰めて大海原に出航できるとは思っていません。
逆に言うと、それぞれの立場で冒険があると思うし、生きがいがあるとも思うのです。出航しない船にも港にいる価値があるのではないでしょうか。
すべての人に宇宙飛行士になれ、というのは意味がないと思いますし、すべての人に仕事を辞めてやりがいを求めて頑張ってみろというのもナンセンス。
正直なところ自分の境遇と他人の境遇はいつまでたっても一緒にはできません。
ですが、これこそ多様性だと思いますが、だからこそ自分の価値観が大事なのです。自分が持っている状況と自分にとって大事な価値観をおさえた上でその範囲の中でできることをするしか幸せは測れないのだと思います。
――つまり著書で書かれていた「評価軸を自分に置く」ということでしょうか?
野口 そうですね、例えばこの令和に都会住まいをしていたら、タワーマンションに住んで、いいレストランで食事して…というようなキラキラした生活に憧れる方もいらっしゃるのかもしれませんが、ほんの80年前までこの国は焼け野原でしたよね。
今年(2025年)は特に戦後80年ということもあって、いろんな映像が流れるでしょう。
当時は1日の食べるものと水があれば、みんな平和に暮らしていたわけです。その時代に戻れということではなく、幸せの基準というのは、「ないものを嘆くのではなくあるもので幸せを得るしかない」ということなのです。
私たちは常に手の内にあるもので幸せになるしかない、そこは明確にした方がいいですよね。