「きんさんぎんさん」の忘れられない言葉…/“遺産は少ないほどもめる”のはなぜ?【鎌田實さん×荻原博子さん】
老後の一番の「節約」は何か、わかりますか? それは「健康でいる」こと。お金を貯めながら長生きできる「健康」と「お金」のプロの結論を、鎌田實さんと荻原博子さんが本音で対談。話題の新刊『お金が貯まる健康習慣 』から、一部を抜粋してお届けします。5回に分けて紹介する最終回は、「貯めたお金は使い切る」すすめ。
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「正直、老後に2000万円も必要ないです」介護が始まっても大丈夫?その内訳を解説【鎌田實さん×荻原博子さん】「子どものため」「老後のため」に貯蓄は必要?
荻原 私ね、忘れられないことがあるんです。90年代に「きんさん ぎんさん」という100歳を超えた双子の姉妹が話題になりましたよね。きんさんは107歳、ぎんさんは108歳でお亡くなりになりましたが、100歳過ぎても2人はとてもお元気で、テレビにも出ていらしたんです。あるとき、テレビで女性リポーターが「テレビの出演料は何に使っているんですか?」と質問したら、「半分は恵まれない人の施設に寄付して、残りは老後のために貯金します」って答えたんですよ!
鎌田 100歳超えても老後の貯蓄なんだ(笑)。
荻原 戦中戦後の飢餓の時代を生き延びた人は「貯金しなくちゃ」という思いが強いと思います。それに「子どもたちに多少なりともお金を残してあげたい」って思うかたも多いんですよね。でも、それは逆効果だと私は思っているんです。遺産を巡って、きょうだいが骨肉の争いをするケースってかなりあるんです。家庭裁判所の相続問題の相談件数のうち、約3割は1000万円以下なんですよ。
鎌田 よく「うちは大した財産がないから大丈夫」って言う人がいるけれど、遺産は少ないほどもめますよ。遺産が3億円あれば、兄貴に2億円とられても自分も1億円もらえる。多少もめても折り合いはつけやすいんです。でも、遺産が少なければ自分のところはほとんど入ってこない可能性もある。だからトラブルになりやすいんです。
荻原 最初は遺産相続でもめているんだけど、だんだん「弟は4年生大学に入れてもらえたのに、私は短大だった」とか「お姉ちゃんだけおひなさまを買ってもらえた」とか、そういう過去の細かな部分での争いになることも少なくありません。それで仲のよかったきょうだいが、一生口をきかない関係になっちゃうのは悲しいですよね。
鎌田 なまじお金を残したせいで、トラブルになるのは残念だよね。
荻原 だから私、死ぬ前にお金は使ってしまいましょうと伝えているんです。70歳を過ぎたら、前回お話しした1200万円をとり分けておいて、残りは使ってしまえばいいんです。「子どもにお金を残してあげたい」と思うんだったら、死後に残すのではなく、いま子どもたちのために使うんです。子どもや孫を引き連れて温泉旅行に行ってもいいし、パーッとハワイに行ってもいい。子ども世代は家のローンや教育費でお金がかかる時期だから、親のお金で旅行に行けるのはきっとうれしいはずです。家族の親睦は深まるし、たくさん思い出ができますよね。
鎌田 いい考えですねえ! それは絶対におすすめです。