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「きんさんぎんさん」の忘れられない言葉…/“遺産は少ないほどもめる”のはなぜ?【鎌田實さん×荻原博子さん】

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ゆうゆうtime編集部

貯め込んだお金は長生きのごほうび。楽しく使おう

鎌田 荻原さんは、どんな使い方を提案しているの?

荻原 ここまで貯めてきた預貯金から介護や医療に必要な1200万円(1人600万円)を引いて、残った分をどう使うかを具体的に考えるのがいいと思っています。たとえば70歳のご夫婦で預貯金が2400万円あるとしたら、1200万円を引くと残りは1200万円になります。そのお金を80歳までの10年間で使いきるための計画を立てるんです。

鎌田 80歳までに使いきるの?

荻原 個人差はもちろんありますけれど、周囲を見ると徐々に食べる量も減るし、おしゃれもしなくなります。だから、楽しく使えるのは80歳くらいまでかもしれないなあと思っているんです。鎌田先生みたいにお元気なかたは、もう少し先まで延ばしたほうがいいかもしれませんが。

鎌田 いずれにしても、「貯めてきたお金を使いきる」と決めて、計画を立てるのは楽しそうだ(笑)。

荻原 ですよね(笑)。ということで、考えていきましょう。もしも1200万円を10年で使うことを考えた場合、1年に使える額は120万円になります。

鎌田 1年間で120万円。けっこうな額ですね。

荻原 これを使えば、夫婦で年1回海外旅行ができます。国内派なら、毎月のように行けるかもしれません。120万円あれば、一族郎党引き連れて温泉旅行にも行けますよね。もしくは1人60万円ずつにきっぱり分けて、それぞれが趣味や旅行に使ってもいい。それに、70歳から75歳までと、76歳から80歳まででは、体力や気力、行動範囲も変わってくると思うんです。だから70代前半に少し多めに予算を回して海外旅行に何回か行き、70代後半から80代は近場を回るという手もあります。

鎌田 考えるだけでワクワクしてくるねえ。1年間で1人60万円ってことは……1カ月で5万円分の外食ができるってわけか。よくテレビでおいしそうなお店が紹介されているじゃない? ああいうところに毎月食べに行くのもいいね。

荻原 1人5万円なら、かなりぜいたくできますよ。しかも鎌田先生はランチ派だから、きっと5万円は1回じゃ使いきれません(笑)。

鎌田 やった、毎週食べに行けちゃう(笑)。

荻原 私ね、10年くらい前に『貯め込むな! お金は死ぬ前に使え。』(マガジンハウス)という本を書いたんですよ。その本を書きながら「あっ! そう言っている私自身がお金を全然使えていないじゃないか」と気づきまして、それからは毎年海外旅行をするようにしています。コロナ禍になってからは国内旅行に切りかえましたが、今年からまた海外旅行を再開しようと思っています。子どもにお金を残さず、全部使いきってやろうと思っているんです(笑)。

鎌田 上手に使いきるって大事! 荻原さんは旅行がお好きなんですね。

荻原 旅行って、3回ワクワクできるんですよ。行く前にプランを立てながらワクワクして、旅行中もワクワクして、帰ってきてから写真を見たり思い出話をしたりしてワクワクできる。1回の旅行で何回も楽しめるって最高ですよ。

鎌田 ぼくも旅行は大好きだ。旅先では、別の人間になれるような気がするんだよね。海外に行くと、ぼくは「鎌田B」なの(笑)。

荻原 わかります。普段なら絶対に着ないような服を着るのも海外ならではの楽しみですよね。「今回の旅行は、こんなイメージの自分でいよう」って考えるだけで楽しくなります。

鎌田 さっきぼく、「人生、おいしいものを食べた人が勝ち」って言いましたけど、もうひとつ「人生、おもしろいことをした人が勝ち」とも言っているんです。せっかく貯めたお金なんだから、たくさんワクワクしなくちゃもったいない。

荻原 昭和世代って、お金を使って楽しむことが苦手な人が多いですよね。私の亡くなった父も、楽しむことが下手くそな人でした。自分を楽しませることは無駄遣いじゃないんだって、思ってほしいんですよね。

鎌田 認知症の始まりによくある「アパシー」、前にも話しましたよね。つまり、無気力、無関心、無感動。そうならないためには、「絶対にお金を残さないで、楽しいことするぞ!」っていう決意がすごく大事だと思います。お金があれば、いろんなことができますから。

Profile
荻原博子さん 

おぎわら・ひろこ●経済ジャーナリスト。1954年長野県生まれ。
大学卒業後、経済事務所勤務を経て独立。生活に根ざした視点から経済の仕組みを、わかりやすく解説してくれることでも人気がある。

この記事の執筆者

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