75歳を前に、熊本に移住した【姜尚中さんの終活】「妻が毎朝作ってくれます」健康維持の秘密とは?
終のすみかとして熊本に移住。「程よい加減で生きるのが一番」の意味とは?
——故郷でもある熊本に、2023年に移住されました。ご著書でも「自分は幸せな着地点を見つけ出したのではないかと思っています」とおっしゃっています。暮らし心地はいかがでしょうか。ゆうゆう世代で移住を考えている方へのアドバイスはありますか。
姜尚中 軽井沢に約10年ぐらいいて、それから箱根に2年半ぐらいいて、共通しているのは“ネオンがない世界”でした。年齢的な問題やいろんなことがあったので、自分にとって心地よいというか、熊本に移ることにしました。
今、私のいるところは、漱石の『三四郎』に出てくる竜田山(立田山)という、標高150メートルくらいの山で、そこの中腹に家があるんですよ。半分高原のような場所で、半分は夜、ネオンが見えるんです。
さっき70歳になって「自分自身はちょっと吹っ切れた感じ」という話をしましたけど、私たちが若い時は、やや左翼がかったリベラルとか、そういうのに憧れたし、そういう人になりたいと思ったりした。でもそれはまあ、ある意味では若気の至り。
『ショーシャンクの空に』という映画を観たことがありますか。モーガン・フリーマンが演じるレッドという受刑者が、仮釈放ができるかどうかで、何度やってもリジェクトされるでしょう。最後に認められた、その時の彼のセリフがですね。「あの時のあいつに会ってたら怒鳴りつけてやりたい」と。なんであんなことしでかしたのか、とね。でも「あの時のあいつ(自分)」は今はいないということを率直に言うシーンなんですよね。ちょっとそれに近い。あの時の自分に会えばね、怒鳴りつけてやるなな、と。もういないし。人間は変わるわけだ。
今は、程よい加減で生きるのが一番。ゆうゆう世代は、それが一番いいんじゃないかな。そうすると、何か「このミッションがなければいけない」とか、「こうでなければいけないのか」ということから少し切り離されて、生きる。
高原の中腹なので静かだし、でも昼間は市中のいろんな雑音が聞こえる。そして西の空を見ると、山が見える、そういう場所に住んでるんですよ。もっとも最初は別の場所に住む予定だったけど、しっくりといかないと思っていたときにサイトを見たらこの物件があってね。これにしよう!と。そんな感じで決めたんですよ(笑)。