【べらぼう】江戸時代に大ブームが巻き起こった「狂歌」とは? 大田南畝(桐谷健太)はどんな人物?
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鷹橋 忍
横浜流星さんが主人公・蔦屋重三郎(つたやじゅうざぶろう/蔦重)を演じる、2025年NHK大河ドラマ「べらぼう〜蔦重栄華乃夢噺(つたじゅうえいがのゆめものがたり)〜」。当時の文化や時代背景、登場人物について、戦国武将や城、水軍などに詳しい作家・鷹橋 忍さんが深掘りし、ドラマを見るのがもっと楽しくなるような記事を隔週でお届けします。今回は狂歌について取り上げます。
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NHK大河ドラマ『べらぼう』第19回「鱗の置き土産」、第20回「寝惚けて候」、第21回「蝦夷桜上野屁音(えぞさくらうえのへおと)」が放送されました。第20回、21回は、狂歌を中心にストーリーが展開され、第21回では、酒の宴にて「屁」を題材とした狂歌が詠まれ、人々の騒ぎ楽しむ様子が印象的でした。
今回はその狂歌と、狂歌ブームを牽引した中心的人物・桐谷健太さんが演じる大田南畝(おおたなんぽ)を取り上げたいと思います。
狂歌とは?
狂歌とは、和歌の形式(五・七・五・七・七)で詠まれる短歌の一首です。通俗的な言葉を用い、社会に対する諧謔(かいぎゃく/ユーモア)、滑稽(おもしろいこと)、風刺や皮肉が盛り込まれるのが特徴です。
鎌倉・室町時代の頃から盛んに行なわれていましたが、江戸時代の天明年間(1781~1789)に狂歌の大ブームが巻き起こり(天明狂歌)、蔦重は狂歌本の出版に参入していきます。
江戸の狂歌ブームは、どのようなきっかけで巻き起こったのでしょうか。
明和6年(1769)、狂歌師・唐衣橘洲(からごろもきっしゅう/小島橘洲)の自宅で、彼を主導者とする狂歌会が開かれました。狂歌の大ブームは、この狂歌会がきっかけだといわれます(安藤優一郎『蔦屋重三郎と田沼時代の謎』)。
唐衣橘洲は、江戸六歌仙の一人である内山賀邸(うちやまがてい)の門下です。内山賀邸は儒学者から国学者に転じ、狂歌を好んだ幕臣です。門下には大田南畝、浜中文一さんが演じる朱楽菅江(あけらかんこう/山崎景貫)などがいました。唐衣橘洲、大田南畝(狂名は四方赤良/よものあから)、朱楽菅江は、「天明狂歌の三大家」と称されます。
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詳細はコチラ蔦重は狂歌があまりうまくなかった?
当初は内山賀邸門下の内輪の集まりだった狂歌会ですが、渡辺謙さんが演じる田沼意次が老中の座を手にした頃から狂歌はだんだんと活発になり、やがて身分や階層を超えて、急速に広まっていきました(沓掛良彦『大田南畝―詩は詩佛書は米庵に狂歌おれ』)。
狂歌を詠む人々は、「連(れん)」と称される同好のグループを結成して活動しました。四方赤良の「四方連」、唐衣橘洲の「四谷連」、朱楽菅江の「朱楽連」など、最盛期には十数もの連が結成されていたといいます。
狂歌ブームが最高潮に達した頃、天明3年(1783)に蔦重も狂歌の仲間に入りました。ドラマでは、大田南畝に誘われ、狂歌の会に足を運ぶ蔦重の姿が描かれていました。蔦唐丸(つたのからまる)という狂名を称し、狂歌界の常連となりますが、彼の歌はあまりうまくなかったといわれています(鈴木俊幸『本の江戸文化講義 蔦屋重三郎と本屋の時代』)。
岡山天音さんが演じる恋川春町も、酒上不埒(さけのうえのふらち)の狂名をもち、大規模な狂歌会を催すなど、天明3年頃から積極的に狂歌を楽しんだようです。
狂歌は記録に残さず、その場で読み捨てられるのが不文律でした。ですが、版元は狂歌の大ブームを放ってはおきませんでした。版元は、狂歌師たちが詠んだ狂歌をまとめた本を次々と出版していきます。蔦重も狂歌本市場に参入しますが、蔦重の狂歌本に多く関わったのが大田南畝です。