禅僧・枡野俊明さん
再発がん治療中の気持ちの切り替え方…禅僧・枡野俊明さんに聞く、つらいからこそ気づける小さな喜びとは?
命と向き合うとき宗教はきっと役に立つ
「同年代の友達は人生を謳歌しているのに……」と、健康な人と自分を比べてしまうこともあるでしょう。けれど、その人たちが相談者さんよりも長生きするかどうかはわかりません。人は誰もが、生まれた瞬間から死に向かって歩み始めます。多くの人は、その事実から目をそむけて生きていられているだけのことです。
病気をきっかけに、禅を学び始める人は少なくありません。禅は生きることの価値を深く見つめ、死までの時間をどう生きていくか、生をどうきわめていくかの答えを求める宗教だからです。禅と哲学はとても近い場所にあるのですが、哲学は「学問」です。一方で禅は「行(ぎょう)」です。理論だけでなく、実際に体を動かして教えを実践し、それに基づいて生きることが禅なのです。
もしも病気のことばかりを悶々と考えて苦しくなってしまうのであれば、禅寺を訪れてみてもいいかもしれません。この先の治療の不安も、過去への後悔もいったんすべて脇において、今この瞬間を生きることに正面から向き合えるはずです。
禅以外の宗教でも、もちろんいいと思います。命に向き合うとき、宗教はきっと役に立ちます。日本人は無宗教の人が多いのですが、宗教に触れることで命に対する別の視点を得られることも多いものです。
アドバイスいただいたのは
枡野俊明さん
曹洞宗徳雄山 建功寺住職
1953年神奈川県生まれ。曹洞宗徳雄山 建功寺第18世住職。庭園デザイナー。多摩美術大学名誉教授。「禅の庭」を通して国内外から高く評価され、2006年ニューズウィーク日本版「世界が尊敬する日本人100人」に。『悩みを手放す21の方法』(主婦の友社)など著書多数。
取材・文/神 素子
※この記事は「ゆうゆう」2025年8月号(主婦の友社)の内容をWEB掲載のために再編集しています。
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