「認知症の親の介護で疲れ切り、逃げ出したい…」【吉本ばななさん】ならどう考えて乗り越える?
Q 老いを日々実感します。好きな服や髪型が似合わなくなってしまったことが悲しいです
A 大切なのは過去より、今。今できることを存分にやれば執着しない
私たちはその時々に、「今できること」をするしかないのだと思います。10代、20代、30代、40代……その年齢ごとに「できること」があって、そのときに「やり切った!」と思えれば、過去への執着は薄まるような気がするのです。
私は40歳になるときに、ビキニの水着を全部捨てました。本当に大好きだったのだけれど、それまで存分に楽しんだし、「もういいや」と割り切ったのです。照準は常に「今」です。60代では高いヒールの靴を捨てました。だから、今の年齢でできることを存分にやり切ってください。
Q 老後のお金が心配です。いくら貯蓄があっても足りなくなりそう……
A 答えが出ない不安は考えるより、まぎらわす! おすすめは掃除です
わかります! 私もお金のことが不安です。今は収入があっても、病気になるかもしれないし、本が売れなくなるかもしれない。未来は見えないから不安は解消できません。では、どうするか。気をまぎらわすしかありません。そんなとき私は掃除します。手足を動かすとモヤモヤが晴れます。
そうそう、以前カマタミワさんのコミックエッセイ『ひとりぐらしもプロの域』を読んで「なるほど!」と思いました。漠然とした将来の不安に対抗するために、現在の支出や今後使うお金を書き出してみる方法です。私もそれを参考にして計算してみたら、少しだけ気持ちが落ち着きました。
Q 定年を迎え、家でゴロゴロしている夫がわずらわしくてたまりません
A 男性は「秘密基地」があると長生きするらしいですよ。風呂なしアパートを与えては
よく聞く話です。でも定年したからわずらわしいわけではなく、ずっとわずらわしい夫だったんですよ。だましだまし、ここまで来ただけ。熟年離婚もいいと思いますが、まずは夫に「秘密基地」を与えてみては? 空いている子ども部屋でも、ガレージでもいい。自分だけの空間がある男性は長生きするらしいです。多くの場合、家は妻のお城ですから、夫は居場所がないんです。
「夫に渡せる部屋はない」なら、家から徒歩圏内にある3万円以下の風呂なしアパートはどうでしょう。夕食&風呂だけは家に戻ってもらうのです。部屋に愛人が住んでいたら? そのときは離婚かな。
Q 肝臓の数値が悪いのにお酒をやめない夫。注意すると逆ギレします
A 夫といえども他人。自分以外の人を変えることはできないと割り切って
肝臓が悪いのにお酒を飲む、肺が悪いのにたばこを吸う、血糖値が高いのに甘いものがやめられない……それは内臓以外のところに問題があるのです。他人の心は変えられません。妻があれこれ言えば言うほど、夫は思春期男子みたいに反抗します。だから逆に、大人扱いしましょう。
「あなたの人生はあなたのものだから、好きなものを飲んで、好きなものを食べる権利がある。もし何かあれば、最期は私がちゃんと看取るから」って言ってみては? 突き放すのではなく、大人として尊重する姿勢を見せるのです。もしかしたら「自分で考えなくちゃ」と思うかもしれません。
今おすすめしたい吉本ばななさんの本
ヨシモトオノ
天井の木目に小さな顔が……吉本ばなな版『遠野物語』誕生
天井の木目に小さな顔が見える––––そんな「不思議といえば不思議」な小さなエピソードは現代もある。民俗学者・柳田國男が各地の伝承を集めた不朽の名作『遠野物語』のように、美しい怪談を集めた「ばなな版・遠野物語」。
●文藝春秋 1760円
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私と街たち(ほぼ自伝)
街の記憶は人生の記憶。今だから語れる「あの頃」
子どもの頃すごした街、恋をした街・別れた街、住むように旅した街、そして父や友の死を受け入れた街道……。記憶の中の風景は実に鮮明で、その時間をともに過ごしたかのような錯覚に陥る。文庫になって7月8日発売。
●河出文庫 770円
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撮影/柴田和宣(主婦の友社)
取材・文/神 素子
※この記事は「ゆうゆう」2025年8月号(主婦の友社)の内容をWEB掲載のために再編集しています。
