私の毒親体験記
酸っぱいみそ汁に色の変わった煮物…多忙な母の無自覚なネグレクトがもたらしたもの【私の毒親体験記】
酸っぱいみそ汁、色の変わった煮物……忙しすぎた母は、毒親だったのでしょうか?そして、私自身の“普通”も歪んでいるのかもしれません。
冷蔵庫は痛みかけた総菜だらけ、それを食べていた私たち
90代で亡くなった母は、家業をほとんど一人で引き受けており、私たちが子どもの頃は特に忙しかったのか毎日疲れ果てていました。長靴も脱げず玄関先に座り込んだ母の姿をよく覚えています。
しわ寄せは子どもにきていて、今思えばネグレクトと言ってもいい状況でした。
風呂は汚くお湯の入れ替えも数日に一度。頭が痒くて、かくとノートにフケがポロポロ落ちるのを面白いなあと思っていたほどです。
特に問題なのは食事でした。
母は一見きちんとしていました。流し台に食器をそのまま置いておくこともせず、ごみも捨てられていて、台所も片づいて見える。
でも、冷蔵庫を開けたら別世界でした。色の変わった煮物、うっすら酸っぱい味噌汁、乾燥しきった一夜干しの魚。母は「まだ食べられる」と言って決して捨てません。食糧難を体験したからでしょうか。料理する気力が残っていないうえに「もったいない」の気持ちも強かったようなのです。
外で働く父は、飲んで帰ってくることが多かったので、残り物の処分は母と私たち子どもの役割でした。痛みかけの総菜は一応温めなおしてはいたようですがそのまま食卓に並び、私は何も考えずに食べる。それが私の“普通”でした。
成長してからは外食したり他の家に招かれる機会も増え「家のごはん、何かおかしい?」と気づいて、表面上は何とか取り繕えるようになりました。
カビの浮いた麦茶ポットを夫に指摘され、異常に清潔にこだわるように
そして、結婚後のある夏の日、私に転機が訪れました。
夫が麦茶を飲み「変な味がする」と首をかしげたのです。「昨日のに継ぎ足したからかな?」と私が答えると、夫は無言で冷蔵庫からポットを取り出し、注ぎ口を覗き込みました。そして、少し引いたような目でこう言ったのです。
「……これ、カビてるよね?」
覗くと白い綿のようなものがついていました。実家ではよくあった光景です。そのくらいじゃ大丈夫だよと言おうとした時、夫が「もしかして、ポット洗ってないの?普通は洗ってから新しいのを入れると思うんだけど」と言いました。
私はすぐに麦茶を捨て、内側がヌルヌルする麦茶ポットを洗いながらショックを受けていました。夫の何気なく言った「普通は」という言葉が、胸にずしんと響いたんです。そうか、私の普通はやっぱりおかしかったんだと。
そこから私は清潔に対して異様なまでに神経質になりました。何度も手を洗い、手が荒れるのも構わずまた洗う。調理器具は使った後消毒液で消毒し、麦茶ポットは特に念入りに消毒、拭いた布巾も日に何度も煮沸消毒。自分でもおかしいと思っているのに辞められず、夫に隠れて消毒していました。
なのに、賞味期限を過ぎた食品は「見た目と匂いが大丈夫なら平気」と思ってしまい、捨てるときに酷い罪悪感が襲ってくる。そんなちぐはぐな感覚が、自分の中でせめぎ合っています。
60代の今はだいぶバランスが取れてきたように思いますが、親元にいたたった十数年の時間が、何十年も尾を引いています。
毒親は、特別に異常な人ではなく、日常の“当たり前”で子どもの感覚を少しずつ歪めてしまうんですね。私の中の矛盾だらけの衛生観念は、あの家で刷り込まれた、歪んだ“普通”の名残なのだと、今でも痛感しています。
(60代・女性・無職)
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