原動力は「怒り」。平和を願い、演劇の未来を見つめる、その思いとは?【渡辺えりさんのターニングポイント#1】
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恩田貴子
『また本日も休診』も、平和への祈りの物語だと思っています
10月、渡辺さんは舞台『また本日も休診~山医者のうた~』に出演する。本作は、のどかな村の日常を描いた、心温まるユーモラスな物語。しかしそこには平和への祈りが込められていると、渡辺さんは語る。
「物語の中では、一人ひとりが生き生きと暮らしています。そんな世界、平和な世の中でしかあり得ないでしょう? 村の人たちが交わす何気ないおしゃべりも、平和だからこそできること。爆弾が落ちてきたら、おしゃべりなんてしていられませんから」
舞台の上で繰り広げられるのは、ささやかで愛おしい村人たちの日々の暮らし。その何気ない日常こそが何よりも尊いのだと、物語は教えてくれる。
「生きている限り、舞台を観に来てくださるお客さんを笑顔にしたいし、生きる活力を与えたい。そのために私は演劇をやっているのに、戦争になったらその大切な人たちも殺されてしまう。それは絶対に嫌なんです。このお芝居も、大きな意味では平和への祈りの物語。その思いを込めて、一生懸命演じたいと思っています」
一番の原動力は、やはり戦争を止めたいという思いだと、渡辺さんは繰り返す。その声は、どこまでもまっすぐで、強い。
「この思いは、これからもずっと変わりません。もし私が倒れでもしたら思いを届けられなくなるかもしれないけど、今のところは嘘みたいに元気ですから(笑)。演劇を通して、生涯平和を訴え続けていきたい。そう思っています」
【Information】『また本日も休診~山医者のうた~』
昭和50年代、那須高原のてっぺんに建つ見川医院。医師・見川鯛山(柄本明)は地域医療に尽力するはずが、診療所には「本日休診」の札が…。今日も悪友の大工・六さん(佐藤B作)と狩猟やパチンコ三昧で、仕事はそっちのけ。おかげで茶畠巡査(笹野高史)や村人たちには「ヤブ医者」と呼ばれる始末。そんな鯛山を尻に敷きながら、明るく支えるのは、勝気で情に厚い妻・テル子(渡辺えり)。村には、山奥で一人暮らしをする阿久津民代(江口のりこ)、村一番の貧乏人である茂(林翔太)と妻・ナツ(市川美織)など、ひと癖もふた癖もある住民たちが暮らしている。広大な高原に四季が移ろいゆく山村で、繰り広げられる笑いと涙の人間模様とは…。
原作/見川鯛山「田舎医者シリーズ」
脚本・演出/田村孝裕 音楽/パスカルズ
出演/柄本明、渡辺えり、江口のりこ、佐藤B作、笹野高史 他
企画・製作/明治座
【東京公演】2025年10月23日~11月2日 会場/明治座
料金(税込)/S席(1・2階席)1万2000円、A席(3階席)6000円
問い合わせ/明治座チケットセンター☎︎03-3666-6666
他日程
【福岡公演】10月11~15日 会場/博多座
【宇都宮公演】11月6日 会場/栃木県総合文化センター メインホール
【山形公演】11月22日 会場/やまぎん県民ホール 大ホール
公式HP/https://kyushin2025.com/
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