【安藤和津さん77歳】支えるものを増やし、複数の柱で立つ人生設計とは
自分なりの体との向き合い方
健康管理は決してジムに通うような大げさなものではない。安藤さんは自分なりの方法で体と向き合っている。
「ジムには通ったことがなくて、ほとんど自己流よ」
毎朝15分の入浴時間を体操の時間にあて、歩数も1日7000歩を目標にしている。70歳を過ぎたら1万歩は多すぎるという情報を得て調整したという、情報収集の細やかさも印象的だ。
新幹線に乗る時間も体操の時間として活用し、お金をかけずに健康維持を実践している。
家事負担を減らす工夫
家事の負担を減らすため、夫の晩酌のつまみも工夫している。以前は5時半から11時半まで「居酒屋状態」だった夕食タイムを、出来合いのお惣菜で済ませることも稀にある。
「そういうことをまったくしてこなかったんだけど、いい年齢だし、お互いに歩み寄らないと」と言いつつも、季節の食材への関心も相変わらず高く、梅干しや柚子胡椒作りなどの手仕事も好き。「ルーティンで季節になるとついやっぱり買っちゃうのよね」と苦笑いする。
最期への備えと家族への思い
安藤さんは最期について具体的に娘たちに伝えている。施設での介護、痛み止めの使用、そして「きれいな顔で送ってもらう」ためのメイクまで、細かく指示を出している。
「最期の顔って大事だから」
母親を見送った経験から、最期の顔の重要性を痛感している。「特殊メイクをハリウッドから連れてきたりして(笑)」という冗談めいた表現にも、真剣な思いが込められている。
好奇心を失わない生き方
「長くうつ病を患っていた頃はまったく好奇心なんて湧かなかったので、失われたこの20年を取り戻すために、ガツガツと楽しいことをしたいなと思って」
現在のアクティブな生活は、失われた時間を取り戻したいという強い想いから生まれている。陶芸、シャンソン、ダンス、書道と、やりたいことが次々と湧き出してくる。食育インストラクターの通信教育も申し込み、「書きたいものがある」という創作への意欲も見せている。
安藤さんの生き方は、年齢を重ねることへの不安を抱く多くの人にとってヒントとなるだろう。ひとつのことに依存せず、常に新しいことにチャレンジし、体と心の健康を維持しながら、家族とのバランスも取っていく。そんな等身大の生き方が、70代からの人生を豊かにするのだ。
PROFILE
安藤和津さん
あんどう・かづ●1948年東京都生まれ。エッセイスト、コメンテーター。上智大学卒業後、イギリス留学を経てCNNのメインキャスターに。79年に俳優の奥田瑛二さんと結婚。長女は映画監督の安藤桃子さん、次女は俳優の安藤サクラさん。現在はエッセイストやコメンテーターとして活動している。著書に『“介護後うつ”~「透明な箱」脱出までの13年間~』(光文社)など。
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撮影/中村彰男
スタイリング/松田綾子(オフィス・ドゥーエ)
ヘア&メイク/高瀬央子
取材・文/志賀佳織
