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名曲「花の首飾り」は30分で作られた【77歳・加橋かつみさんのターニングポイント#2】ザ・タイガースの舞台裏

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藤岡眞澄

グループサウンズの全盛期を駆け抜けたザ・タイガースの元メンバー 加橋かつみさん。胸に残る「花の首飾り」は今も多くの人この心をとらえています。時代を代表する名曲を歌い上げた加橋さんの人生には、いくつものターニングポイントがありました。音楽と歩んできた道のり、そして現在について伺いました。第2回は、ザ・タイガース時代の舞台裏について。

▼前回はこちら▼

>>ザ・タイガース結成前夜の秘話【77歳・加橋かつみさんのターニングポイント#1】衝撃を受けた出会い

『花の首飾り』は「ザ・タイガース」史上№1の大ヒット曲に

——1966年11月、5人で上京。バンド名を「ザ・タイガース」に変更し、翌年2月には『僕のマリー』でシングルデビューして、瞬く間に超人気バンドに上り詰めました。

このとき、加橋さんは19歳。ほとんど24時間、朝から夜中まで分単刻みのスケジュールで働いていたという話を前回、伺いました。


前の日にマネジャーから渡されるスケジュール表がそれこそ真っ黒。それを見ても仕方ない。「次、ここ」と言われた現場に行くしかない。それが延々と続く。戦争に行ったらこんな感じなんだろうか?と思っていました。

——テレビに映る「ザ・タイガース」の姿からはそんな気配は微塵も感じられませんでした。それほど忙しくても、楽しかった瞬間はありましたか?

僕の記憶では、何一つなかったですね。

——何一つ、ですか?

だって寝ていないんですよ。楽しいも楽しくないもないです。

——それだけハードだったんですね。でも、女の子にキャーキャー言われて、もてたことは、ちょっとうれしかったのでは?

数人ならともかく、数百人がワーッと押し寄せて来て、引っかかれるわ、服はボロボロにされるわ……。

共同生活していた家の周りに24時間、100人の女の子が張り付いていたり、寝ている間に2階にはしごをかけて入って来られたら、どう思いますか? 

——はしご……ですか。まるで忍者かスパイ映画ですね。尋常ではありません。

そんな中、加橋さんが初めてメインボーカルを務めた5枚目シングル『花の首飾り』は、「ザ・タイガース」史上№1の大ヒット曲になりました。

作曲のすぎやまこういち先生も、『花の首飾り』はご自身が作ったたくさんの曲の中で5本の指に入る、とおっしゃっていますね。


メインボーカルのきっかけは、僕が「日劇ウエスタンカーニバル」で「ビージーズ」の『ホリディ』を歌ったのを、すぎやま先生が客席でたまたま聴いていらしたこと。家に帰って、30分で作った曲が『花の首飾り』だったそうです。

——たった30分で、あの名曲ができたんですね。天から降り注ぐような加橋さんのハイトーン・ボイスがバンドのサウンドに寄り添って、「なんて美しい曲だろう」と小学生だった私の心にも染み渡りました。“タイガース人気”を不動のものにした一曲だと思います。

でも、130万枚売れても、「NHK紅白歌合戦」に呼ばれることもなければ、「レコード大賞」に選ばれることもなかった。GSで「紅白」に出たのは、「(ジャッキー吉川と)ブルー・コメッツ」くらいだったんじゃないかと思います。

音がやかましいだとか、不良なんかしたことないのに、ロングヘアだからという理由だけで不良だと言われた時代ですからね。

バンドはもちろんやりがいがありましたけれど、社会からは理解されない大変さもありました。

それでも僕は「なんと言われようが、かまわない」と思っていました。その気持ちは、今も変わらないです。

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