肌寒くなってくる時期の「お風呂でのウトウト」が命取りに!法医学者が警告する入浴中の重大リスク
何気ない日常の中に、思いがけない“死の落とし穴”が潜んでいるかもしれません。大切な人が、そして自分が、そんな危険に巻き込まれないために——。話題の新刊『こんなことで、死にたくなかった 法医学者だけが知っている高齢者の「意外な死因」』(高木徹也著・三笠書房)から、そのヒントを抜粋してお届けします。第3回は、「お風呂で死ぬ!?」
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>>熱々のお茶が危険!?日本人の死因第6位「誤嚥性肺炎」を防ぐ!法医学者のアドバイスお風呂で死ぬ!?
冬の季節が近づいてくると、法医学者は「風呂溺が増える時期だなあ」と思うようになります。
風呂溺とは、入浴中に浴槽内で沈んだ状態で死亡すること。特に冬場に多く、近年では「ヒートショック」という名称で知られるようになってきました。
ただでさえ、冬は寒さで血管が収縮しています。その状態で温かい浴槽に入ると、血管が拡張して血圧が急激に低下し、脳に送りこむ血液量が減少してしまいます。これが、ヒートショックの主な要因です。
さらに統計的に、ヒートショックは65歳以上の高齢者に多い、という特徴があります。65歳というと、最近では多くの企業における定年の年齢。長寿国となった現代の日本では、見た目はまだまだ若々しく元気な人も多く見受けられますが、体内の老化現象はしっかりと進行しているのです。
そんな老化の中でも、特に「自律神経反射の遅延」と「感覚機能の低下」は、入浴中の死亡に深く関わっているように思います。
自律神経とは、脳に血液を送りこむために働く交感神経と、胃腸に血液を送りこむために働く副交感神経の総称です。簡単に言うと、交感神経は活動に、副交感神経は休眠に関する反射を担っています。一日の間に、この交感神経と副交感神経が入れ替わるように働くことで、日常生活における身体への過剰な負荷に抑制をかけ、私たちは円滑に生命を維持することができています。
ところが65歳あたりを境として、この交感神経と副交感神経の入れ替わりが遅延してしまうのです。
