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【ばけばけ】寂しい限りだが、これが二人の運命か。トキ(髙石あかり)には“やり直せる未来”が待っている![写真多数]

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田幸和歌子

このまま東京で二人で暮らせないかと

教えてもらった住所を頼りにたどり着いた下宿にいたのが松江の秀才〝大磐石〟こと錦織(吉沢亮)ら同郷の若者たちだ。みな松江出身で、帝大の前に倒れていた銀二郎を助けてくれたのだという。下宿は松江出身者が集まる場だった。

帰ってきた銀二郎とトキは、再開後互いに詫びる。
「銀二郎さんとまた一緒に暮らしたい。毎朝しじみ汁を作って」
こうトキは願うが、銀二郎はもう松江の松野家には戻れない、このまま東京で二人で暮らせないかと言う。

翌朝、トキはしじみ汁の代わりにあさり汁を作った。
「銀さん、こんな朝餉を作ってくれるお嫁さんから逃げちゃいけんですよ」
下宿人のひとり、帝大生の根岸(北野秀気)にそう言われると、
「でももう、ずっと一緒だと思います」
と答える銀二郎。

アツアツの新婚のような雰囲気があるものの、トキはやはりはっきりと返事をすることはできなかった。

【ばけばけ】寂しい限りだが、これが二人の運命か。トキ(髙石あかり)には“やり直せる未来”が待っている![写真多数](画像4)

「ばけばけ」第19回より(C)NHK

【ばけばけ】寂しい限りだが、これが二人の運命か。トキ(髙石あかり)には“やり直せる未来”が待っている![写真多数](画像5)

「ばけばけ」第19回より(C)NHK

【ばけばけ】寂しい限りだが、これが二人の運命か。トキ(髙石あかり)には“やり直せる未来”が待っている![写真多数](画像6)

「ばけばけ」第19回より(C)NHK

これが二人の運命だったのだろう

同じころ、松野家ではこのままトキも帰ってこないのではないかと、駆け落ちのような状況になることを心配する。純粋な家族愛かと思いきや、そうなると「松野家が終わる」と口にしてしまう司之助に、そこに加えて跡取りとして養子を迎えるとまで言い出す勘右衛門。トキのこと以上に「家」が心配とは、どこまで縛られているんだと心底呆れ返ってしまう。

この「縛り」が、銀二郎の思いに煮え切らない態度しかとれないトキの呪縛の強さとなることは明白だ。下宿先の面々が、西洋の良さを教えてくれたり、これからの日本は過去(≒武家社会)にとらわれてはいけないと聞かされるなど、いろいろと諭してくれようとするところは同郷による素敵な友情だ。

しかし、トキの呪縛はあまりにも強固なものだった。「英国式ブレックファスト」を根岸が用意してくれ、みんなで牛乳を飲み、口のまわりに〝白ひげ〟を作って笑いあう。そんな他愛のない空気が、かつての笑顔の絶えなかった松野家の光景をトキに思い出させることとなり、思わずトキの目から涙がこぼれてしまう。
「ごめんなさい、銀二郎さんこめんなさい……」

トキは松江に一人で帰ることを決意する。トキの出生の秘密を気にするような表情を銀二郎は見せるが、それを察して、
「本当の親です」
とトキは言った。
「あのひとたちが私の親で、私は松野家の本当の娘です」
トキは、「松野家」を選んだ。

一緒に帰れなくてごめんと詫びる銀二郎だが、それぞれの思う「家」という価値観の違いはこの先もずっと立ち塞がるものとなったであろう。寂しいかぎりだが、これが二人の運命だったのだろう。

【ばけばけ】寂しい限りだが、これが二人の運命か。トキ(髙石あかり)には“やり直せる未来”が待っている![写真多数](画像7)

「ばけばけ」第20回より(C)NHK

松江に帰ったトキを、銀二郎を連れ戻せなかったことを責めるでもなく、暖かく満面の笑顔で迎える松野家の面々。悲しい別れだが、東京で気付かされた「やり直せる未来」がトキには待っている。

希望とともにこれからのトキの生き方を見守っていきたい。

【ばけばけ】寂しい限りだが、これが二人の運命か。トキ(髙石あかり)には“やり直せる未来”が待っている![写真多数](画像8)

「ばけばけ」第20回より(C)NHK

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