「兄とは折り合いが悪かった」映画『兄を持ち運べるサイズに』【原作者・村井理子さん】突然死した兄の身辺整理を記録した理由とは?
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ゆうゆう編集部
憎かった兄。でも切ろうとしても切れないのが“家族”なんだ、と思う
『兄の終い』に出てくるのは実在の人たち。本にすることに、ためらいはなかったのだろうか。
「迷いはありました。子どもや元配偶者には許可を得て、生きている人たちを傷つけることのない内容にしようと思ったので、隠した部分も多々あります。本を読んだ方からは『自分の兄のことをそこまで書くのか』というレビューも多かったけれど、『そこまで』は書いていない。本当はもっともっとある(笑)」
反響は大きく、映画『兄を持ち運べるサイズに』になった。
「多賀城市の方々がエキストラでたくさん参加してくれて。『兄ちゃん、よかったじゃん』って思います」
映画の試写を見て、大号泣したという村井さん。
「親が死んでも兄が死んでも泣かなかったのに。兄役のオダギリジョーさんが本当に兄に見えて。父と母もそっくりなんです。家族4人がそろうシーンは、『そうそう確かにこういう時間があったなぁ』って」
スクリーンには、50年近く前、両親が仕事で、遅くまで帰ってこない夜をふたりきりで過ごす兄妹がいた。幼い妹を自転車にのせて、自分たちが暮らす港町を走る兄……。
「一緒にテレビを見たり。子ども時代の兄は、すごくやさしかった。本を書いたことで、より身近に感じるようになりました」
PROFILE
村井 理子さん
むらい・りこ●1970年静岡県生まれ。滋賀県在住。
ブッシュ大統領の追っかけブログが評判を呼び翻訳家に。
著書に『全員悪人』『家族』『村井さんちの生活』『ある翻訳家の取り憑かれた日常』他多数。
翻訳書に『「ダメ女」たちの人生を変えた奇跡の料理教室』他。
X(エックス)での発信も人気。
『兄の終い』
村井 理子著 CEメディアハウス
反響を呼んだ単行本が、待望の文庫に。映画『兄を持ち運べるサイズに』(中野量太監督・11月28日全国公開)の原作。村井さん役は柴咲コウ、元妻役は満島ひかり。
※詳細は以下のボタンより
【Information】映画『兄を持ち運べるサイズに』
脚本・監督/中野量太
原作/村井理子「兄の終い」(CEメディアハウス刊)
出演/柴咲コウ、オダギリジョー、満島ひかり、青山姫乃、味元耀大、斉藤陽一郎、岩瀬亮、浦井のりひろ(男性ブランコ)、足立智充、村川絵梨、不破万作、吹越満
11月28日(金)公開
配給/カルチュア・パブリッシャーズ
©2025 「兄を持ち運べるサイズに」製作委員会
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※この記事は「ゆうゆう」2025年12月号(主婦の友社)の内容をWEB掲載のために再編集しています。
取材・文/田﨑佳子
