【ばけばけ】大事件はなし。でも登場人物の「暇」に共感したくなる第20週の妙
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田幸和歌子
何も起こらない日々こそが、このドラマの真骨頂!?
そんな司之介が、ある日、大金をこっそり小豆相場に突っ込むという、「暇」を切り裂くような展開が訪れ、「また大借金の流れ!?」と思ってしまいそうなところ、これは不穏なBGMなどとあわせたミスリード的演出であり、相場は大成功、司之介は大儲けしてしまう。
「生きちょる気がせんのじゃ。借金させちょくれ!」
まるでギャンブル中毒のようなセリフをのたまい嘆く司之介だが、借金が生きるモチベーションとなっていたということかもしれないが、借金中毒というのはなかなか斬新だ(とはいえそこまで必死に働いているようでもなく、借金の大半はヘブンが返してくれたようなかたちであるわけだが)。
そしてきわめつけは、ヘブンが希望する朝食のトーストのために用いる焼き網の紛失事件である。そこに正木が名探偵のような立ち回りをし始め、探偵モノめいた犯人捜しが始まる。その推理の過程で、容疑をかけられる登場人物によるミニコントのような「if」の盗難再現にまあまあ力を入れているところがまた、本筋のストーリーと関係なさすぎて笑ってしまうほどだ(結局は誰かが盗んだものでなく、すぐに見つかりにくい隙間に落ちていたという、これまたどうでもいい結論だったわけだが)。
朝ドラの世界では、ときに「尺稼ぎ」と揶揄されることもあるような、先に述べたような「どうでもいいやりとり」「これ必要?」と視聴者が感じるエピソードが発生することがある。現在の週5本体制になってからも、約130話というテレビドラマとしてはかなり長尺の連続ドラマの構成ゆえ、ストーリーが脇にそれることもあるのは仕方ないことだろう。その使い方、そして調理法のようなものがそれぞれのドラマの持ち味となればそれでいい。
視聴者視点でも、第20週をまさに「暇」と感じたかもしれない。考えようによっては、これは登場人物たちへの共感とも言えるかもしれない。トキや司之介の感じる「暇」を視聴しながら一緒に感じさせてくれる。本作が当初掲げたテーマ「何も起こらない日々を描く」がまさにこれであり、もしかしたらこの第20週こそがこのドラマの真髄、真骨頂のようなものなのかもしれない。
「いつ『怪談』を書き始めるんだよ」と、これまでの何かを成し遂げた偉人系の朝ドラの展開に感じることがあったジレンマはどうしても生じてしまうが、『怪談』にヘブンが熱心になってしまうことは、「何か起こってしまう」こととなってしまう。それゆえにできるだけ温存というか、何も起こさせないような展開を続けている、そんな挑戦をしている実験的作品となっているのだろうか。
結論として、何も起こらない中にも「ニホンジン、ココロ、アリマス」という結論を導き出し、再び机に向うヘブン。『草枕』ではないが、暇の中に何かを見つけることはできたのだろうか。
どこまで『怪談』に取り組まず、何かを起こさず視聴者を引きつけていくか。新たな視点での注目が生まれた気がする。
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