【豊臣兄弟!】豊臣秀長(仲野太賀)の思い人・直(白石聖)の早すぎ&衝撃的な退場が切ない…
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志賀佳織
第8回「墨俣一夜城」
そして続く第8回「墨俣一夜城」である。永禄9(1566)年夏、木曾川上流では、蜂須賀正勝と前野長康の指揮のもと、川並衆によるいかだづくりが着々と進められていた。一方、小一郎は直と新たに居を構え、ともに暮らし始めた。直は、父に小一郎と夫婦になることを報告しにいきたいと言い、弥助を伴に、中村へ帰っていく。
作業の報告に訪れた小一郎と藤吉郎に、信長は、できるだけ敵を墨俣に引きつけておくよう指示する。これまで墨俣に砦を築くのに失敗してきたのは、斎藤の家臣である大垣城の氏家直元(なおもと/河内大和)、曾根城の稲葉良通(よしみち/嶋尾康史)、北方城の安藤守就(もりなり/田中哲司)の「美濃三人衆」がいたからだ。今度は敵が砦に気を取られている隙に、稲葉山城にもっとも近い北方城を攻め落とすというのが信長の作戦だった。「わしらはまた捨て石というわけか」と腐りかける正勝に、藤吉郎は「信長さまはわしでなければやれぬと見込んで任せてくださったのじゃ。これほど喜ばしいことはない」と励ます。
そんなころ、北方城主の安藤守就は、菩提山(ぼだいさん)ふもとにある質素な庵を訪ねて、格子戸の中にいる男に向かって、何かを聞いていた。「織田の動き、どう思う?」。その問いに対し、戸の隙間から紙切れが差し出される。その1枚目には「墨俣」と書いてあった。そして2枚目も差し出される。「こたびは何かが違う」とそこには書かれていた。
守就は、稲葉山城の斎藤龍興のもとへ出向き、早めに手を打つべきだと進言するが、「織田を侮ってはなりませぬ」という守就の言葉にも、龍興は、今回も砦が出来上がる寸前に攻撃せよと命じるのみだ。このときの守就の顔が、だんだん疑問や不信に満ちていっているのがよくわかる。龍興が何かを指示するたびに、三人衆の中から城主に対する信頼が失われていく。
夜がふけて墨俣では、川並衆が無数のいかだから次々と降りてきて、砦づくりを始めた。翌朝、前日夕方までにはなかった砦が組みあがっているのを見た斎藤方は焦る。慌てた龍興は、前言を翻し、「なぜもっと早くに手を打たなかったのだ」と怒って急いで兵を送るよう指示する。
墨俣での作業中、直の持たせてくれた握り飯の包みを開いて食べ始める小一郎。しかしうっかり落として拾おうとかがんだところへ、敵方の鉄砲の弾が命中した。「直に助けられたわ」
斎藤軍の攻撃が続く中、小一郎たちは予定通り、長康らとともに北方城へ向かう。夕方になるとまた墨俣砦への攻撃が激しくなり、藤吉郎たちは、もはやここまでと腹をくくる。合図とともに堤が切られ、堀や城の周囲に水が流れ込んだ。そして流した油に火矢(ひや)を放ち退散。墨俣砦は炎に包まれた敵方とともに、一夜にして焼け落ちていった。「たった一夜であったが、お主らとともにつくったこの城のこと、わしは生涯忘れん。よき城であった」。藤吉郎は満足してそうつぶやくのだった。
そのころ、小一郎たちは、予想に反して北方城で大勢の敵方に囲まれていた。もはやこれまでとなったときに、小一郎は守就に向き合ってこう話しかける。「われらの策を見抜かれたこと、実にお見事。さすがは美濃に三人衆ありと謳われたお方にございます。そのお力、われらにお貸しくだされ」
そこまで言うのなら、お主らが美濃に寝返ったらよいだろうと反論する守就に、なおも小一郎は続ける。「それでも構いませぬ。それで皆がよき暮らしができるようになるなら、願ってもないこと。そう思えるよう、拙者を説き伏せてくだされ。わが兄なら迷わずこう申します。『信長さまなら新しき世を必ずおつくりになる』と。斎藤龍興さまには、それができまするか。できると申せますか」
かねてから城主に不信を抱いていた守就は痛いところを突かれた形になった。聞く耳を持たない守就一行とは激しい斬り合いとなり、小一郎は長康とともに脱出する。暗闇の中を逃げていると、突然、男(竹中半兵衛/菅田将暉)が現れた。男は「この策は誰が考えたのか」と小一郎に尋ねた。小一郎たちは死に物狂いで逃げる。
なぜ織田信長が、豊臣秀吉が、天下統一を果たしていったのか、それは絶大な力によるものだと思っていたのだが、こうしてみると、少々横暴でも、皆を引きつけ、理想を描いて信じさせるだけの圧倒的な説得力とカリスマがあったからなのだと、それなくして人はついてこなかったのだということが、このドラマでは改めてわかりやすく伝わってくる。小物の城主のもとで動揺する配下の心を、田中哲司さんが実にうまく演じているのも印象的である。小一郎の若い清々しさと対峙するここは、間違いなく今回の見どころのひとつだ。
その頃、中村を訪れた直は、父・坂井喜左衛門(きざえもん/大倉孝二)に歓待されたと信じたのも束の間、結婚を反対されて蔵に閉じ込められる。弥助に助けられて何とか脱出した直は、もう一度、父にきちんと向き合う。
「口では憎たらしいこともいっぱい言われたけど、でも父さまはいざというときはいつだって、自分のことより私のことを大切にしてくださいました。だから今までありがとうございました。父さま、私今幸せなんじゃ。父さまの娘に生まれてよかった。ありがとう父さま」
しかし、その帰り道、村人が激しく争う場面に遭遇した直は、子どもをかばって身を投げ出し、背中を斬られて命を落としてしまう。北方城から約束通り生きて帰ってきた小一郎だったが、待っていたのは直の亡骸だった。慟哭する小一郎。そこであまりにもぷっつりと物語が終わってしまうのも衝撃だった。
直は史実にはない、オリジナルのキャストなのだそうだが、百姓から武将へとなかなか気持ちの定まらない、勇気のない小一郎をいつも叱咤激励して背中を押していく存在だった。小一郎が新たな道を進むうえで、絶対に必要な女性として描かれていただけに、その死は、ある段階を見届けて役目を終えたと言っているようで何とも切ない。
「幸せじゃ」という言葉を最後に遺していったことだけが救いだが、このあと小一郎は何を思い、どう生きていくのだろうか。先日、「あさイチ」のプレミアムトークに出演した白石聖さんが言っていたが、このドラマにおいて、直のシンボルはひょうたんで、小一郎は風車なのだそうだ。そう思うと、直が倒れた草むらの脇には風車が二つ揺れていた。あれは小一郎なのだった。
この第7回、第8回は、何と言っても白石聖さんの気高くさえ感じられる清楚でさわやかな直の姿が鮮烈だった。この役が彼女でよかったと改めて思った。
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