見ているだけで引き込まれる—多部未華子の“華やかさ”の秘密を、朝ドラ『風、薫る』から探る
公開日
更新日
田幸和歌子
運命を手繰り寄せようとする直美
この時代、もっとも華やかな場所のひとつ、鹿鳴館。言うまでもないが、歴史の教科書にも登場し、誰もが知る明治期を代表する社交場である。舞踏会が開かれたり国賓を招いたりするような文明開花の象徴のような場といっていいだろう。
身寄りもなく、教会で育てられた直美が成長してきた世界とは最も遠いきらびやかな世界である。そんな世界に自らの意志(計算?)で単身飛び込もうとする直美。鹿鳴館の前で倒れてみせ、出自をごまかしながらも教会仕込みの英語で「This is my life」と訴え給仕の職を手にするハングリーさは直美の強さがうかがいしれる。
そんな直美の新生活にも、さまざまな人物が登場する。
まずはすでに登場済みでおそらくキーパーソンとなるであろう、“鹿鳴館の華”とも呼ばれる捨松(多部未華子)だ。“華”と呼ばれるだけあって、捨松という女性がそのまま鹿鳴館文化の象徴のような役割である。
この捨松のオーラ、華やかさはさすが多部未華子というべきものを感じるが、多部未華子といえば、2009年に放送された連続テレビ小説第80作『つばさ』の主人公である。
少し余談となるが、前作の『ばけばけ』にも第65作『ほんまもん』で主人公を演じた池脇千鶴が出演していたように、朝ドラのかつての主人公がのちの作品に出演することは珍しいことではなく、ときに「歴代主人公共演」といったトピックスになることもある。
しかし、池脇のときもそんな感じではあったが、「つばさちゃんが朝ドラに帰ってきた!」とか、歴代主人公共演! といった雰囲気はあまり感じない。それは出演した朝ドラの訴求力の大小とともに、朝ドラ以上の活躍を存分にしており、かつての朝ドラ主人公という印象が薄いのだろうなというところはあるだろう。過去の主人公という朝ドラフィルターを介することなく、多部未華子という一流の役者が重要な役で出演しているという、大きな存在感を感じるばかりである。
話題を本編に戻す。「また間違えた」と言ったりするものの、良くも悪くも運命に流されることの多いりんとは対照的に、出自や身分を偽りながらも自らの手で運命を手繰り寄せようとする直美。鹿鳴館の華とは呼ばれるものの、捨松もまた、戊辰戦争で敗れ散った会津藩の生まれで、仇敵といっていい存在の薩摩藩の大山巌(高嶋政宏)の後妻となったという、二人と変わらぬ、あるいはそれ以上といっていい運命に振り回される女性なのである。
そんな捨松なだけに、直美の嘘は見抜いている。そこを納得づくで直美を受け入れ、教養を手に入れたものの女性の立場の弱さを説いていたりする捨松が思うこととは——。
そんななか直美が鹿鳴館で出会ったのが、冒頭の告白をした海軍中尉の栄介(藤原季節)である。爽やかで誠実、欠点のなさそうな存在である。告白を受け入れた直美であるが、この関係もまた、大前提として“直美の嘘”があることがこの先気になるところである。
鹿鳴館と瑞穂屋を舞台に、高速かつ濃密に進行していく2つの縦軸のストーリー。そこにどういった横軸が作用し、再びこの縦軸が重なり合っていくのか。その展開の妙に期待は高まる。
▼あわせて読みたい▼
>>朝ドラ【風、薫る】第1週で気になる“意外な存在”とは?占い師(研ナオコ)の予言と伏線を読み解く >>【豊臣兄弟!】政略結婚させられた市(宮﨑あおい)と慶(吉岡里帆)、二人に幸せな未来はあるのか? >>【豊臣兄弟!】第1回から最新話までのあらすじを一気読み!(ネタバレあり)
