朝ドラ【風、薫る】亀吉(三浦貴大)の再登場「母ちゃん見習ってわがままに生きろ」に、元夫婦の間に流れた時間を感じた
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田幸和歌子
「母ちゃん見習ってわがままに生きろ」
さて、シマケンと環である。かつて小説家を目指す道の途中で夢やぶれたシマケンは、環の悩みを一番理解できるのかもしれない。シマケンもまた、環が幼いころから優しく見守ってきた存在である。
環の絵への思いは、母のりんにはっきり打ち明けたことはなかった。環にとっても理解者ということだろう、環はこれまで描き続けてきた絵をシマケンに見せた。シマケンはそんな環の描いた絵を興味深く眺め、なんともうれしそうな表情を見せる。まだまだ真似事の域だと言う環に、「クリエイトは必ず真似ごとから始まる。学ぶの語源は『まねぶ』とも」と道は違えど「クリエイト」な道を目指したからこそ分かる視点から環を勇気づける。
環にとって、シマケンと過ごした時間、シマケンから受け取った言葉が自分の絵を描く原点となっていた。シマケンは、一度でも何かを生み出す喜びを知ってしまうとそこから逃れられなくなる、それが創作の恐ろしさだと、自身の思いを重ね合わせるように環に言い、シマケンなりに背中を押す。
押された背中の勢いで、環は絵を描きたいことをりんに打ち明ける。そして、シマケンに「明光新報」の編集長・綿貫(小松和重)を紹介してもらう。
「素質はあっても、そんなやつはごまんといる」と、生きていくには過酷な道であることを告げるが、また絵を見せに来るように言う。
綿貫はシマケンがかつて小説の原稿を見てもらい、連載を目指していた相手でもある。シマケンに最終的に弱さを指摘した存在もある。そのやりとりを見るあたたかな眼差しは、自身が途中で手放した夢を託すようにも見えた。
そして、今週もうひとつの「再会」が描かれた。かつてのりんの夫、亀吉の再登場である。酒をやめ、まっとうに生きているようだ。亀吉とりんたちをつなぐのもまた、環の存在だった。亀吉の母・貞(根岸季衣)もまた、この世を去っていた。亀吉の母、環にとっての祖母は、字を知らないながらも一生懸命たどたどしく環への手紙をしたためていた。つたない文字で記された、環の幸せを願う思い、そこには嘘偽りはないのだろう。
幼いころにりんに連れられ上京し、父も祖母も自分のことなど覚えていないかと思っていた環は、さまざまな人たちの思いをあらためて実感する。亀吉にも人生の迷いを見抜かれ、おめえの母は自分勝手な女だから気にするなと言われる。
「母ちゃん見習ってわがままに生きろ」
この亀吉の言葉や態度にもまた、元夫婦の間に流れた時間を感じさせられる。
環を軸にさまざまな人々の関係性が大きく動き、環自身の人生も、大きく動き出そうとしている。物語もいよいよ終盤、いろいろな周囲の人たちの思いを背負いながら、母とは違う自分の道を歩き出そうと決意する環、そしてりん、直美、二人の主人公の歩く道はこの先どう展開し、着地していくのか。期待が高まる。
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