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「お父さん」「お母さん」になる前の親を知っていますか? 思い出をたどって見つけた、家族の新しい物語【「おとなの学校」イベントレポート】

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ゆうゆうtime編集部

親のことは、よく知っているつもり。でも、子どもの頃や青春時代に何に夢中になり、何を思っていたのかは、意外と知らないもの。昔の思い出を一緒にたどることで、新しい家族の物語が見えてきました。親子の対話をテーマにした「自分ものがたり教室」のイベントレポートです。

親とはよく話しているつもりでも、親がどんな人生を歩んできたのかは、意外と知らないものです。子どもの頃や若い頃、何に夢中になり、何を感じていたのか。家族だからこそ、あらためて聞く機会は少ないかもしれません。でも、昔の思い出を一緒にたどってみると、これまで知らなかった「一人の人としての親」に出会えることがあります。

2026年9月9日、「ゆうゆうtime」とのコラボ企画として、「おとなの学校」が親子の対話をテーマにした「自分ものがたり教室」を開催しました。
ここでは、企画編集担当の橋本夏子が、イベントの模様をレポートいたします。

講師は「おとなの学校」グループ代表の大浦敬子先生。認知症ケアの現場でも取り入れられている「回想法」を体験しながら、親や家族と昔の思い出を語り合うことの大切さを学びました。会場では、思い出を一つ語るたびに表情がやわらぎ、初対面の人同士にも自然と笑い声が広がっていく。心がほどけるような、あたたかな時間になりました。

プロフィール
大浦敬子(おおうら・けいこ)
医師、医学博士。「おとなの学校」グループ代表。介護施設を学校に見立て、高齢者の学ぶ喜びや意欲を引き出す「学校式介護」を開発。回想法を取り入れた「おとなの教科書」を全国に届けている。

思い出を語った瞬間、人はその頃の自分に戻っていく

敬子先生のお話を聞いてまず感じたのは、記憶を引き出す話し方と、場づくりのうまさでした。難しい内容も、問いかけや音楽、笑いを交えながら、自分の記憶に重ねて聞けるようにしてくれる。気がつけば、会場のあちこちから「そういえばね」と昔の思い出が出てきます。

たとえば、「中学生の頃、好きだった人を思い出してみてください」という問いかけ。少し緊張していた参加者の表情が、ふっとやわらぎました。「どんな人だったかな」「そういえば、こんなことがあった」と話すうちに、照れたり、笑ったり、頬を赤くしたり。何十年も前のことなのに、その頃の気持ちまでよみがえってくるようでした。70代の方が10代の思い出を語る姿を見ていると、人の中には、何歳になっても、その頃の自分がちゃんと残っているのだと感じました。

音楽も、記憶を呼び起こす大きなきっかけです。その世代に流行った曲を使ったワークでは、懐かしいイントロが流れた瞬間に「あ、この曲!」と声が上がり、会場が一気に盛り上がりました。曲を聴いていた頃の景色や、一緒にいた人、その時代の出来事まで、次々と思い出されていきます。

音楽だけでなく、食べ物や季節の行事など、ほんの小さなきっかけで、忘れていた記憶がよみがえることもあります。思い出すのは出来事だけでなく、そのときの気持ちも一緒なのだと感じました。

知らない人同士が、思い出一つで笑い合える

もう一つ心に残ったのは、参加者のみなさんがあっという間に打ち解けていったことです。最初はほとんどが初対面だったのに、子どもの頃や学校のこと、好きだった人の話をするうちに、「私もそういうことあった!」「わー、懐かしい」「うちはこうだった」と、会場のあちこちから弾んだ声や笑い声が聞こえてきました。

誰かの思い出をきっかけに、別の人の記憶も呼び起こされていく。同じ時代の歌や運動会の話など、共通する記憶が見つかるたびに、知らなかった人同士の距離がぐっと近づいていきました。

私も企画を考えるとき、「その場に来た人の記憶に何が残るだろう」ということを大切にしています。情報だけでなく、誰かと笑ったことや心が動いた瞬間、その場の空気まで持ち帰ってもらえる時間をつくりたい。会場全体が敬子先生の手であたたかな空気に変わっていくのを感じながら、思い出には、人と人の心を自然につなぐ力もあるのだと思いました。

親は、最初から「お父さん」「お母さん」だったわけではない

この企画を考えながら、私自身が何度も思ったことがあります。私たちは親のことを、つい「お父さん」「お母さん」という役割の中だけで見てしまいがちです。でも、親にも私たちの知らない子ども時代があり、青春があり、恋をした時間があり、仕事があり、夢中になったことがあり、嬉しかったことも悔しかったこともある。一人の人として歩んできた、長い人生があります。

私自身、これまで父に話を聞き、その人生をたどる時間を持ってきました。編集者として20年以上、たくさんの方にインタビューをしてきましたが、家族のように近い人ほど、知っているつもりになっていて、実は知らないことだらけです。「そんなことを考えていたんだ」「そんな時代があったんだ」と初めて知るたびに、「父親」としてだけでなく、一人の人としての父に出会えた気がしました。
親子という関係を少し離れて、一人の人と一人の人として向き合えたように思います。

「質問する」のではなく、一緒にその人の物語をたどっていく

編集者としてのインタビューで大切にしている、相手の気持ちをほぐす会話のコツや、「思い出を一緒にたどる会話の作り方」もお話ししました。

相手の話を受け取り、そこに自分の感想や気づきを重ねながら、もう少し聞いてみる。一方的に質問するのではなく、お互いの記憶や経験を行き来しながら話すと、「そういえば……」と、その人自身も忘れていたことが出てくることがあります。そうして一緒にその人のストーリーをたどっていくのが、私のインタビューのスタイルです。

親子の会話も同じです。「昔はどうだった?」と漠然と聞くより、「運動会のお弁当には何が入っていた?」「夏休みはどこに行った?」「学校から帰ったら何をして遊んでいた?」と、季節や場所、食べ物など、小さな記憶の入口から始めてみる。出てきた話に少し続きを聞いて、自分の思い出も「私はね」と返してみる。

質問する人と答える人に分かれず、一緒に思い出し、話を重ねていく。その時間の中で、家族の物語は少しずつ紡がれていくのだと思います。

語り合った思い出は、その人の中に残っていきます。人生で手にしたモノを、すべて最後まで持っていくことはできません。でも、誰かと笑ったこと、誰かを好きだったこと、一生懸命だったこと、家族と過ごしたこと。そうした記憶は、残り続けます。

楽しかった思い出を話すと、自然に表情が明るくなる。昔の恋の話をすると、ちょっと胸がときめく。懐かしい歌を聴けば、その頃の景色までよみがえる。思い出は過去に置いてきたものではなく、今の心も温めてくれるものなのです。

だからこそ、親と話せる今、一緒に笑える今に、もっといろいろな話を聞いておきたい。そして、これからの新しい思い出もつくっていきたい。今回のセミナーを通して、あらためてそう感じました。

全国から約140人が参加した「かぞくの教室」

2026年9月16日には、大浦敬子先生が長年あたためてきた「かぞくの教室」のオンライン無料体験会が開催され、全国から約140人が参加しました。私も参加しましたが、オンラインでありながら、やはりあたたかな時間でした。

この日のテーマは「運動会の思い出」。「リレーの選手だった」「転んで恥ずかしかった」「逆走してしまった」「お弁当にはこんなものが入っていた」「オクラホマミキサーを踊って、好きな人と手をつないだ」など、ひとつのテーマから驚くほどたくさんの記憶があふれ出します。

各グループには会話をナビゲートする方が入り、参加者の言葉を拾いながら、自然に次の思い出へつないでいきます。誰かの話を聞いて忘れていた記憶がよみがえったり、家族との会話で「そんなことまで覚えていてくれたんだ」と嬉しくなったり、「子どもの頃、私はこんなふうに見られていたんだ」と初めて知ったり。話を重ねることそのものが、家族の新しい思い出になっていくように感じました。

「病院はいつ?」「薬は飲んだ?」。年齢を重ねた親との会話は、どうしても必要な確認ばかりになりがちです。でも、本当はもっと聞いてみたいことがあるはず。「どんな子だった?」「何が一番楽しかった?」「どんな人が好きだった?」。そんな話ができる時間は、いつまでも続くわけではありません。

どんな人の中にも、その人にしかない物語があります。昔のことを聞き、一緒に思い出をたどることで、今まで知らなかった一面に出会えることもあります。それは、家族だからこそできること。親が元気な今のうちに、その物語を分かち合う時間を大切にしたいものです。

“モノ”ではなく、親の話を聞く時間を贈る

何か特別なことをしなくてもいい。昔の写真を見る。懐かしい曲を聴く。運動会や学校の話をする。好きだった人の話をする。一緒に思い出して、一緒に笑う。その時間そのものが、家族にとってかけがえのない贈りものになるのではないでしょうか。

「かぞくの教室」には、「何を聞いたらいいかわからない」という人でも自然に会話を始められるよう、『かぞくの思い出ブック』も用意されています。これをきっかけに話してみれば、知らなかった親の一面や、初めて聞く気持ちに出会えるかもしれません。

二つの教室を通して、家族と過ごす時間や、思い出を一緒につくり語り合うことを、これまで以上に大切にしたいと思いました。

「人は、思い出で生きている」

敬子先生の言葉と、会場いっぱいに広がった笑顔を思い返すたびに、その意味をあらためて感じます。私の心にも、長く残る一日になりました。

次回の「かぞくの教室」無料体験会は、2026年11月28日(土)に開催予定です。親子で思い出を語り合うのは、できそうで意外とできないもの。これを機に、ぜひ家族でゆっくり思い出を語る時間をつくってみてはいかがでしょうか。

取材・文/橋本夏子



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