【豊臣兄弟!】秀長(仲野太賀)は大和をどう治めた? 寺社と商いに挑む「秀長の国」
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志賀佳織
第38回「和を以て、大和をなす」
寺社のあと、新たな戦いをすることになったのは、長く奈良に根付いた商人たちだった。大和国の財政があと半年ほどで立ち行かなくなると正親から告げられた秀長は、商いを盛んにすることで、国の財政を根本から建て直そうとする。その手始めとして、さびれて誰もよりつかなくなっている郡山の城下の商いを活性化することにしたのだ。
ところが、その頃の大和の商いは、寺社の集まる奈良に集中していた。豪商たちの専売組合である「座」が、商いを独占していたのだ。秀長は奈良の豪商たちを訪ね、郡山への移転を促すが、既得権益を守りたい豪商・川窪清俊(きよとし/カトウシンスケ)らは、郡山への移転を頑なに拒むのだった。
古い国ならではの「しきたり」に、これでもかと悩ませられる秀長だったが、慶が城下でよい筆を買い求めたと報告する。何でも奈良からきた職人が作ったものらしい。「奈良の仲間と袂を分かってこちらへ来たのなら、何か力になってくれるやもしれません」という慶の言葉に、秀長は期待を寄せる。
秀長は郡山の城下町を家臣たちとともに歩いてみたところ、改めて空き家が目立つことに驚く。その中に、慶が筆を買い求めたという筆屋が見つかる。店主の才蔵(さいぞう/間宮祥太朗)が現れて、奈良では座に縛られて、いいものを作りたいと思っても数をそろえるように急き立てられ、しかも見合わぬ値がつけられている。座に加わっていなければ、筆のもととなる軸や毛も手に入らなくなってしまって、思うようにできなかったと言う。そこに「お殿様が郡山での商いを認めてくださいました。今しかないと座を飛び出した」と言うが、郡山は閑古鳥が鳴いていて、もう商いそのものを半ばあきらめている状況だ。
秀長は奈良の筆屋の座の面々と会った。しかし、彼らは自分たちは古よりのしきたりを守りたいだけだと、頑なに聞き入れない。この国を動かしているのは武家でも寺社でもなく、我ら商人であると言うのだ。秀長はひとつ提案をする。「一月で郡山を人が集まる栄えた町にしてみせよう。そしてその目で奈良と郡山、どちらが商いに適した町か見極めるがよい。もし一月で何も変わらなければ、そのときはそなたたちに従おう」
無茶な提案に側近たちは反対するが、秀長は「郡山を商いに適した町にするため、商人らの店の借り賃を免除し、当座の商いに入り用の金を貸し付ける」と宣言する。「銭を産む者に銭を貸すのじゃ。さすれば町は富み、民もわしらも潤うというもの、まさに万事円満じゃ」
そのためにも才蔵の筆が必要なのだと、改めて秀長は才蔵に協力を頼む。才蔵も秀長の心意気に、「精一杯励みまする!」と応える。さらに、皆が商いをしやすい土地にするために、買い手のことも考えて、同じ商いをひとところにまとめることを正親が提案する。「一理あるな!」と秀長も賛成する。
その日から家臣も家族も一丸となって、筆の売り込みに、奈良、京、大阪、堺と飛び回る。秀長は千宗易(そうえき/吉岡秀隆)を呼び寄せる。そして堺の商人たちに郡山への移住を勧めてくれないかと頼むが、「無理強いをされても人はなかなか動かれへん」と断られる。だが、宗易はあることを思いつく。それは、今をときめく絵師・狩野永徳(えいとく/片岡鶴太郎)に筆を勧めてみるということだった。ただし、永徳は屏風の端から端まで線を引いてもかすれないで引ける、そんな筆でないとダメだ、そんな筆があればいくらでも買うと言う。
何としても永徳に認められる筆を作りたいと思う秀長たちは、家臣たちがあらゆる獣の毛を集め、才蔵に片端から作らせる。だが、さまざまな配合を試みるも、なかなか屏風の長さ分かすれずに書ける筆が出来上がらない。
そんな時、慶と末が陣中見舞いを持って訪れる。慶は自らが手習いを見ている子どもたちが才蔵の筆で書いたものを、才蔵に渡す。どれも墨がくっきりとしたよい字である。それを見て心が励まされた才蔵は、再びやる気を取り戻す。
そのとき、その目に、末が身に着けていた毛の束の装飾が目に留まる。堺で買い求めた「天竺(てんじく=インド)伝来のヤクという獣の毛じゃそうじゃ」と末が説明するや、才蔵は「これだ!」と飛びつく。「この毛を使えばできるかもしれませぬ」。驚いた末だが、ほんの少しなら使ってもよいとしぶしぶ承諾。才蔵は思い切り切り取って、それに鹿と山羊の毛を合わせて筆を作った。
そして、試し書きをしてみると、みごと端から端まで、ついに一カ所のかすれもなく線が引けたのだった。試し書きを促された秀長は、たっぷり墨を含ませた筆で「和」の一字を書いた。和を以て、この大和の国を栄えさせていく、その決意の表れだった。
筆は永徳が買い求めることとなり、才蔵の店も繁盛する。それが呼び水となり、あれほど頑固に郡山移転を拒否していた奈良の座の連中も、手のひらを返したように、郡山で商いを行うことになり、郡山は商いの町として発展していくのであった。
秀吉もついに新たな「氏」を「豊臣」と定めた。そこには自分のことを支えてくれている、自分が大切に思っているすべての者たち、万民を豊かにするという願いが込められていた。ここに羽柴豊臣朝臣(あそん)秀吉が誕生した。兄弟は大坂の空の下、郡山の空の下、同じ目標に歩を進めながら「達者にしているかのう」と互いを思っているのだった。
秀長は、紺屋町、材木町、綿町、茶町、豆腐町、雑穀町、藺(いの)町、魚塩町、本町、奈良町、堺町、今井町、柳町という13の町からなる自治組織を作った。彼らは地租が免除される見返りに、城下町の治安維持、防火、伝馬(馬の調達)などの都市機能を請け負ったと言われている。「万事円満」をモットーにした地道な秀長らしい町づくりが、今も残る町名からも感じられて、いいなあと思う。
坂口涼太郎、伊藤健太郎、間宮祥太朗などと次々豪華なゲスト出演者が現れて、そのことにも驚いてしまう2回であった。しかし、どれも強烈な印象を必要とされる役柄で、やはりこの人だからの説得力だなと感心することも多かった。一方、家臣団のムードメーカー正勝が、まさかの「ナレ死」。寂しくなるが、さて天下一統への道は、このまましばらく安泰に進むのか。いよいよ大詰めになってきた物語、次回も見逃せない。
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