「武道館やろう!」直太朗さんのひと言から始まった60周年。森山良子さんの感謝と次の挑戦
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ゆうゆう編集部
歌手生活60周年を迎える森山良子さん。来年1月7日には、日本武道館公演が控えています。長いキャリアを重ねた今も、歌への探究心は尽きることがありません。森山さんにとって「学び」とは、「面白そう」という好奇心の延長にあるもののようです。60年の歌手人生を振り返りながら、学ぶことの楽しさ、教わったことを自分なりに吸収する方法、そしてすべての方にお礼の気持ちを届ける日本武道館への思いを語ってもらいました。
森山良子さん 歌手
もりやま・りょうこ●1967年「この広い野原いっぱい」でデビュー。「涙そうそう」「さとうきび畑」など数々の名曲を歌い続け、日本を代表するシンガーとして活躍。2008年に紫綬褒章を受章。24年にはジャズアルバム『Life Is Beautiful』を発表。26年に歌手生活60周年を迎え、全国ツアーを開催中。
「武道館やろう!」直太朗のひと言から始まった60周年
今の私だからこそ届けられる歌を皆さんに
2027年1月7日に、日本武道館で60周年記念公演を行うことになりました。武道館の話を聞いたのは、本当に突然のことでした。ある日、直太朗が玄関を開けて、「武道館やろう! 60周年の記念にやるからね」と言って入ってきたんです(笑)。あまりにも自然に言うので、最初は「え、本当? 武道館!」という感じでしたが、時間がたつにつれて、少しずつ実感が湧いてきました。60年という時間を振り返ると、本当にたくさんの方に支えていただいて、たくさんの出会いがあって、たくさんの歌に助けられてきたんだなと思います。けれど60周年だからといって、ただ過去を振り返るだけのステージではなく、これまで積み重ねたものをもう一度見つめ直して、今の私だから届けられるものにしたいと思っています。
歌手として歩み始めた頃、作詞・作曲家の浜口庫之助先生からいただいた言葉があります。当時の私はスタジオで、渡された譜面を見ながら、間違えないようにきちんと歌おうとマイクに向かっていました。そんな私に先生が放った言葉です。
「君ね、マイクの向こうには何千、何万というお客さまがいるんだよ。そこに届けるんだよ」
先生のその言葉は、今でも忘れられません。私はそれまできちんと歌うことに気を取られて「誰かに届ける」という意識を持てていなかったんですね。自分の中でしか歌っていなかった。次に向かう扉を開いてくれた出来事でした。
ジャズを学ぶためにニューヨークへ
私にとって学ぶということは、何か特別なことを始めるというよりも、「もっと知りたい」と思った気持ちを大切にすること。私は歌を仕事にして60年になりますが、だからといって「もう十分知っている」と思ったことはありません。むしろ、長く続けてきたからこそ、まだまだ知らないことがある。歌には終わりがないから。だから、今でも「もっと知りたい」と思うのでしょう。教わることで、自分の考え方が広がっていくと感じています。
近年、あらためて学んだものの一つがジャズです。ジャズは以前から好きでしたし、歌ってもきました。でも、もっと深く知りたいと思い、大江千里さんとのジャズアルバムの制作をきっかけに、ニューヨークに行き何人かの先生に教えていただきました。
ある先生から「アドリブやインプロビゼーションは極力抑えたほうがいい」というアドバイスをいただいたことがありました。楽器のフレーズをまねるのもよい方法だという先生も。
でも、私の中には「自由に歌ってみたい」という気持ちが残っていました。もっとジャズらしく自分の感覚で遊んでみたいと思ったんです。
それで、もう一度、違う場所で学んでみたいと思い、翌年にはボストンのバークリー音楽大学の先生について学ぶことにしたんです。そこで私は、自分が感じていた疑問を一つずつ聞いていきました。
「ここでアドリブを入れてもいいですか?」。そう聞くと先生は「いいのよ。大丈夫。オッケー、ビューティフル!」と、とても自由に受け止めてくださったんです。その言葉がすごくうれしかった。もちろん、形を整えることも大切です。それと同時に、基本を学んだうえで、自分の中にあるものを信じて表現していいんだ、と背中を押していただいた気がしました。
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