91歳・樋口恵子さんが語る、「おひとりさま」か「不本意同居老人」か。光熱費がこうも高いと、ひとり暮らしに影響も
おひとりさまで暮らすか、子どもたちと同居するか、子どものいる方は考えどころかもしれません。介護保険や遺族年金制度が整い、おひとりさまが増えましたが、この先はどうなるでしょう。話題の新刊『老いの地平線 91歳自信をもってボケてます』から、著者の樋口恵子さんのメッセージを紹介します。
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91歳・樋口恵子さんが心に決めたこと。「90代で残っている記憶力はプラスのほうに使いたいですね」「おひとりさま」か「不本意同居老人」か
昔は......といっても、つい10年、20年前まで、高齢者は都市圏にいる子どもの家に引き取られることがよくありました。「呼び寄せ老人」「引き取り老人」なんて言葉があったくらいに、ひとり暮らしになると残ったばあさん、たまにはじいさんも、そして老夫婦も引き取られていたわけです。
これを行政用語でいうと「不本意同居老人」。そんなうれしくない言葉があったそうですが、今は不本意同居がほとんどなくなりました。
そもそも子どものほうだって同居なんかしたくない。年寄りのほうは自分ひとりじゃどうしようもないから、不本意ながら行っていたわけです。それが最近は、「いいから、いいから。まだひとりで大丈夫。もうちょっと弱ったら頼む......かもね」。
というわけで、おひとりさまがこれだけ増えているのです。
そして、その背景にあるのは介護保険と遺族年金(※)。この制度が整ったからこそです。介護保険制度ではおひとりさまでもさまざまな介護サービスや福祉サポートを受けることができ、夫亡き後は遺族年金が受給できます。
昔はひとり暮らしになった高齢者は子どもからの仕送りで生活していました。仕送りしてもらっておいて「私はここにいたい。そっちの家には行きたくない」とは言いづらいでしょうから、不本意同居もやむなしという状況だったといえます。
そういう意味では、現代は社会全体が豊かになったのです。だから「行かない、同居しない」と言えるようになった。ひとり暮らしはお金がかかりますからね。
ところが今、電気代やガス代が上がっています。こんなに光熱費が高くなると「もうひとりでは暮らしていけない」なんて声も聞こえてきそうです。
もしかしたら、「不本意同居老人」がまた増えるかもしれませんね。
※遺族年金
遺族基礎年金と遺族厚生年金がある。亡くなった人によって生計を維持されていた遺族は、亡くなった人の年金の加入状況などにより、いずれか、または両方の年金が受け取れる。