夫の役職定年がもうすぐ。家のローンもあるのに、収入が段階的に下がる50代をどう切り抜ける?井戸美枝さんがアドバイス
退職金で住宅ローン完済は慎重に!
出費の見直しは、ボリュームが大きいものから着手すると効果が出やすく、やる気にもつながります。
特に、住宅ローンが退職後の再雇用や年金生活でも続く人は、早めの見直しが必須。放置していると老後の生活が苦しくなるだけでなく、最悪の場合は住む家をなくすこともないとは限りません。
子どもが学業を終えて教育費が終わったら、できるだけ繰り上げ返済をして、できれば60歳の定年までに、遅くとも再雇用などで働いているあいだに、ローンを返し終えられるように計画をたてましょう。
「退職金で一気に住宅ローンを完済して、借金をなくすつもり」という声もよく聞きますが、退職金は長い老後の生活を支える大事な資金です。仮に年金だけでふだんの生活ができたとしても、家の修繕費や冠婚葬祭費などの特別支出、病気や介護などイザというときの備えは、生活費とは別に貯蓄でキープしておかなければなりません。住宅ローン返済で退職金がほとんどなくなってしまうのは、あまりにも危険です。
退職金の額にもよりますが、住宅ローンの完済に退職金をあてるなら、「残債が退職金の半分以内」が目安。それ以上出すと、老後資金が不足しがちです。
もし退職金の半分で完済できず、一部を繰り上げ返済するなら、「退職金の4分の1以内」を目安にしましょう。以降の返済リスクに備えて、退職金を多めに残しておくと安心です。
定年以降も続く住宅ローンは、繰り上げ返済を検討
定年以降も住宅ローン返済が続く人は、まず、現状のままでは完済は何歳か、退職金や貯蓄からいくらぐらい繰り上げ返済できるか、それよってどれだけ返済年数が減らせるか、また、定年後の毎月の収入からいくらくらいなら返していけるかなど、一つずつ試算してみましょう。
特に教育費が終わったら、退職までの期間は繰上げ返済のチャンス! それまで支払っていた学費分をそのまま貯蓄にシフトして繰り上げ返済にまわせば、返済利息を含む負債を大きく減らすことができます。
たとえば、今55歳で、それまで年間100万円の教育費がかかっていたとすれば、60歳までの5年間に500万円の貯蓄をすることも可能。そのうちの200万円を繰り上げ返済したら返済期間を何年短縮できて、いくら利息負担が減らせるか、300万円ならどうか、などとさまざまなケースを試算してみてください。
定年までに貯められる貯蓄や退職金も予想して、老後資金として残すお金とのバランスを考えることも大切です。
繰り上げ返済の効果
例)
当初借入額 3000万円
当初借入期間 35年0ヵ月
返済済み期間 25年0ヵ月
金利 初回から2.5%
↓
100万円の繰り上げ返済で、利息約43万円軽減、返済期間1年1ヵ月短縮
300万円の繰り上げ返済で、利息約118万円軽減、返済期間3年3ヵ月短縮
繰り上げ返済の効果は、金融広報中央委員会のサイト「知るぽると」でシミュレーションできます。当初の借入額や借入期間、借入金利、繰り上げ返済額などを入力するだけでわかるので、ぜひ自分のケースで計算して役立ててください。