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58歳 エッセイスト 広瀬裕子さんの暮らし【後編】「不要なものを減らすことで生まれる心地よさ」

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ゆうゆうtime編集部

日々を明るく照らしてくれる小さな楽しみや、心を潤すための暮らしの工夫は、幸せを感じさせてくれます。そんな暮らしを営み、わたしらしく、今を生きる女性を紹介する『60代からの小さくて明るい暮らし』(主婦の友社)から、エッセイスト 広瀬裕子さんの後編をお届けします。

★前編はこちら★

58歳 エッセイスト 広瀬裕子さんの暮らし「不安は“課題”と受けとめて、かろやかに歩いていく」

PROFILE
エッセイスト・設計事務所共同代表
広瀬裕子さん(58歳)
東京都在住。ひとり暮らし
東京で生まれ育ち、葉山や鎌倉、香川を経て、2023年から東京在住。衣食住をテーマに執筆を続ける一方、設計事務所で空間デザインディレクターとしても活動。近著は『55歳、大人のまんなか』(PHP研究所)。

思考も暮らしも違和感を解消してフラットな心地よさをつくりたい

ここのところ広瀬さんの中で優先度が高くなっている“課題”は、“違和感をなくすこと”。

「10代の頃から、雑多な色やデザインのものを使うたび心がざわつくことがありました。私が気にしすぎなのかと思っていましたが、年齢を重ねるにつれ、違和感のあるものをなくすと空間も心も風通しがよくなることに気づいたんです。今回の引っ越しでも、コンパクトな住まいに合わせてものを厳選しました。選ぶ基準は“10年後も使い続けたいか”。というのも父の遺品整理をしていると、着なくなった衣類や使わずじまいの新品が多かったからなんです」

今後は“違和感の解消”を基準に不要なものを削ぎ落とし、自分らしさの純度を高める時期なのかもしれません。近年、ヘアカラーをやめたのもそのひとつ。

「50代後半から、当時の自分と髪色にパズルがはまっていないような違和感があって。短くしたり、ブリーチしたりしてみてもしっくりこなかったので、髪を染めるのをやめてみました」

また、建築家の友人に誘われて50歳から始めた空間設計の仕事でも、違和感を解消することの大切さを実感しているそう。

「ホテルやお店などの空間ディレクションでは、居心地のよさに焦点を当てて考えるのですが、人によって好みは違うので、何かを足すのは難しい。でも不快なものを減らすことで生まれる心地よさは、多くの人に共通するんです」

このフラットな心地よさを他者にシェアしていくことが、広瀬さんの今後のテーマです。

「父の介護経験では気づきがたくさんありました。椅子ひとつとっても介護施設や病院では安全性が最優先。同じように一般のお宅でも手すりや水回りの準備が必要な場合は多いはず。同世代の方々に向けて、安全性を高めつつ、違和感なく日常生活ができる空間をつくれたらと考えています」

窓からの眺め。内見で目にした富士山がこの部屋を選ぶ決め手に。夜景の輝きも素敵。

愛猫のあめは11歳。「引っ越し前は外に出ていたので心配しましたが、マンション生活にも慣れてくれました」。

『とらや』のお菓子はわたしの特別。父の施設に行く際には毎回立ち寄り、父が亡くなった翌日もお菓子をいただいて気持ちを強くしました。月2回、生菓子が替わるので、そのつど訪れています」。菓子板は小山剛さん、菓子切りは坂野友紀さん、茶碗は森岡希世子さんの作品。

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