私らしく生きる 50代からの大人世代へ

人気記事ランキング 連載・特集

作家・医師の南杏子さん、33歳で医学生に「学ぶのに “遅い” はありません」【前編】

公開日

更新日

ゆうゆう編集部

「これかも」と思ったらつかむ。行動する

他の医学生との年齢差は気にならなかったと、屈託なく微笑む。

「2割が学士入学の学生でしたから。ただ、覚えなくてはならないことが山ほどありました。でも辛いなんてこれっぽっちも思わなかったなあ。一度、社会に出たからこそ、教えてもらえるということがいかに貴重であるかがわかる。自分が知りたいと渇望していたことをどんどん学べるのですから、楽しくて楽しくて。わくわくしていました」

自宅から大学まで片道2時間、往復4時間かかった。その通学時間を自習時間にあてた。

「休みの日もほぼ勉強でした。娘は順応性が高く、私が机に向かっている後ろでお絵かきをしたりとマイペースで。ただ、学校の先生に呼び出しを受け、もう少しお子さんと関わってくださいと言われたときはさすがにこたえましたが」

そんな娘さんも、一度入学した大学から他大学の医学部に学士入学。今、母と同じ道を歩んでいる。

33歳で東海大学医学部の2年次に編入。家族の協力のもと子育てしながら、勉強に励んだ。

38歳。「知らないことを教えてもらえるのが楽しくて楽しくて」卒業生総代となる。

大学卒業後、慶應大学病院で老年内科の研修医として勤務したが、その後二度、夫の海外勤務に同行し、日本を離れた。40歳から2年間はイギリスに、44歳から2年間はスイスに滞在。

「このとき、日本にとどまり、医師としての修業を積むという道もあったと思います。でも、私は海外で暮らせるチャンスを逃したくなかったのです」

娘さんに現地で英語とフランス語を学ぶ機会を与えることができるという思いもあった。

「海外では日本にいたときには出ないような発想が生まれる。それも魅力でした。医師になろうと決めたのも、イギリスで暮らして家庭医の制度を知ったこと、カレッジで解剖生理学を学んで熱中したことなどが背景にあります。

スイスではWHO(世界保健機関)のボランティアをさせてもらったのですが、『あ、国際機関って、こういうふうに動いているんだ』という発見や出会いがたくさんありました。『あ、面白そう』と思ったらつかむ。行動する。それが今の私をつくったような気がします」

慶應大学病院の老年内科で研修医に。早朝から深夜まで夢中で臨床に取り組む。

(後編に続く)

※この記事は「ゆうゆう」2022年1月号(主婦の友社)の内容をWEB掲載のために再編集しています。

★あわせて読みたい★

橋幸夫さん、78歳で念願の大学生に!「学び続ける限り、人生に引退なし」 料理研究家・枝元なほみさん「人と比べないと心に決めたら、人の目が気にならなくなりました」【前編】 松島トモ子さん「理不尽なこと、辛いことも視点を変えれば喜びや楽しみが見つかります」
この記事の執筆者

PICK UP 編集部ピックアップ