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「買っても買っても、心は満たされません」禅僧 枡野俊明さんに学ぶ、「物との関係」について

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ゆうゆう編集部

「物」にしばられていませんか? 物がたくさんあることが豊かさだと、それが便利さだという錯覚……。『悩みを手放す21の方法』(主婦の友社)から抜粋して、禅僧 枡野俊明さんの話を伺いましょう。

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プロフィール
枡野俊明(ますの・しゅんみょう)
1953年、神奈川県生まれ。曹洞宗徳雄山建功寺第18世住職。庭園デザイナー。多摩美術大学名誉教授。大学卒業後、大本山總持寺で修行。「禅の庭」を通して国内外から高く評価される。芸術選奨文部大臣新人賞受賞、ドイツ連邦共和国功労勲章功労十字小綬章を受章。2006年ニューズウィーク日本版「世界が尊敬する日本人100人」に選出される。『禅僧が教える不安に負けない心の整え方』(主婦の友社)など著書多数。

心は高度経済成長期のまま、でいいのですか

昭和、平成、令和と3つの時代を生きてきた私にとって、この50年ほどの変化は目を見張るばかりです。生活スタイルや情報通信技術は驚くべき進化を遂げました。

にもかかわらず、昭和の価値観はいまだに根強く残っていると感じることがしばしばあります。その代表は「物」との関係です。

昭和20年の敗戦で、日本は焼け野原になりました。食べるものさえない時代、経済の立て直しは最優先課題だったはずです。大量生産、大量消費の時代が始まり、日本は高度経済成長を成し遂げました。新しい家、新しい車、新しい家電。物を買うことはステータスだったはずです。

平成が始まるとバブルがはじけ、経済は落ち込み、家計は引き締めを迫られます。それでも消費意欲は変わりません。100円ショップ、ファストファッションが大流行し、「同じ機能なら少しでも安く」と考えるようになりました。そして「安いから買う」「とりあえず買っておく」という感覚も当たり前になりました。

時代が変わっても、私たちは「物」にしばられています。使っていない食器や雑貨、着ていない洋服で棚やクローゼットがパンパンになっても、それが豊かさだと、それが便利さだと錯覚してきました。しかし令和の今、多くの人が気づき始めています。これはおかしい。危険なのではないか、と。

毎年のように日本や世界各地で豪雨災害が起こっています。海外では森林火災が絶えません。南極の氷がとけて動物が住めなくなり、100年以内に国土を失う国もあります。これらはすべて、経済活動を過剰に重視し、地球環境を破壊してきたことが原因です。身勝手に追い続けてきた「豊かさ」を、ここで一度見直さなくてはいけない、そんな機運が世界規模で高まってきています。環境問題についてはずいぶん前から言われてきましたが、いよいよ本格的に対策が進み始めていると感じます。

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山川草木悉皆成仏
(さんせんそうもくしっかいじょうぶつ)

「山にも川にも草にも木にもすべて仏様の御心がある」という意味の禅語。自然と共存し合って生きてきたのが人間。その気持ちに立ち返ることが現代にこそ必要なのかもしれない。

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