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世界でわずか6%の女性指揮者を目指した少女を描く『パリのちいさなオーケストラ』とは?【中野翠のCINEMAコラム】

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中野翠

ユニークな視点と粋な文章でまとめる名コラムニスト・中野翠さんが、おすすめ映画について語ります。今回は『パリのちいさなオーケストラ』と、『本日公休』の2作品をご紹介します。

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クラシック音楽の世界の話――。その世界では、女性指揮者はわずか6%しかいないと言う。そう言えば、そうだなあと、ようやく気がつく。指揮者と言ったら男の人というイメージが強い。

この映画の主人公であるザイアは女性で、しかもアルジェリア移民の子。ゆたかな家の子では無い。

そんな二重三重のハンディキャップを背負いながら、名門の音楽院に入る。やがて世界的指揮者に認められ、貧富の垣根を越えた「ディヴェルティメント・オーケストラ」を結成したザイア・ジウアニの実話をもとにした映画です。

と、こう書くと、何だか歯をくいしばったような、根性物の映画のようだが、さすがフランス(?)、明朗で軽快な味わいもあるのがありがたい。監督(マリー=カスティーユ・マンシヨン=シャール)も、また女性なのだった。オススメします。

なぜかフッと、大昔(1957年)のオーストリア映画『野ばら』を懐かしく思い出した。ウィーン少年合唱団の物語。主人公の少年を演じたミハエル・アンデは一躍、日本でも人気者に(今や御年79歳。健在のようです)。

『パリのちいさなオーケストラ』

監督・脚本/マリー=カスティーユ・マンシヨン=シャール 
出演/ウーヤラ・アマムラ、リナ・エル・アラビ、ニエル・アレストリュプ 他 
9月20日よりヒューマントラストシネマ有楽町、新宿シネマカリテ 他 全国順次公開
(フランス 配給/アットエンタテインメント)

© Easy Tiger / Estello Films / France 2 Cinéma

さて、もう一本。こちらも9月20日からの公開ですが、台湾映画『本日公休』が、じんわりと楽しい。

台湾の都市である台中の街を背景に、昔ながらの理髪店をいとなむ家族の話――。

主人公のおばちゃんは女手ひとつで子供たちを育てて来た。店には、古くからの常連客が何人もいて、それぞれ人生の一断面に接することになる。おばちゃんはそれぞれの客に余計な口出しはせず、そっと胸の中にしまっている。

そんな中、遠くから通って来てくれていた常連客の“先生”が病に伏したと知り、店に「本日公休」のフダをして、最後の散髪になるだろうという思いを秘めつつ、“先生”の町へと向かうのだが……という話。

「老い」と「死」という誰もが逃れられない現実――。それをどう受けとめられるか。重苦しい問いだが、おばちゃんは騒ぎ立てない。動じない。すべてをやんわり受けとめているかのよう。後味もいい映画です。

『本日公休』

監督・脚本/フー・ティエンユー 
出演/ルー・シャオフェン、フー・モンボー、アニー・チェン 他
9月20日より新宿武蔵野館、シネスイッチ銀座 他 全国順次公開
(台湾 配給/ザジフィルムズ、オリオフィルムズ) 

©2023 Bole Film Co., Ltd. ASOBI Production Co., Ltd. All Rights Reserved

※この記事は「ゆうゆう」2024年10月号(主婦の友社)の内容をWEB掲載のため再編集しています。

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